307,「システム連携と新ビジネスモデル」

2006/05/19

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
今日は、システム連係によるビジネスモデル革新について説明します。この
前に効率化とビジネスプロセスの進化があるのですが、一気にビジネスモデ
ルまで筆が進んでしまいました。

システムとは本当に面白いものです。現実のビジネスをシステムに置き替え
るのではなく、システム化によって、現実の世界が変わることが面白い。

グーグルは、あちらの世界の覇権を握ろうとしていますが、私はこちらの世
界を変えようと考えています。だって、こちらの世界の方が市場は大きいん
ですから。


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「システム連携と新ビジネスモデル」

20年以上も前から、百貨店の課題は「自主MD」である。大手アパレルに
依存するのではなく、独自のMDを組み立てること。それには、長年親しん
だ「委託仕入れ+派遣販売員」制度に決別しなければならない。

中小アパレルにとって、百貨店と取引するのは容易ではない。売れ残った商
品は返品されるし、販売員を出さなければならない。資本力のない企業は、
現行の百貨店の取引には応じられない。百貨店が個性的な商品を品揃えする
には、完全買取(百貨店では委託仕入れを普通買取と呼び、返品なしの本当
の買取を完全買取と呼んでいる)で商品を仕入れ、自前の販売員で売り切ら
なければならない。小売店としては当然のことだが、長年の依存体質が「バ
イイング能力」や「販売能力」を低下させてしまったのである。

そもそもなぜ、「委託仕入れ+派遣販売員」の制度ができたのか。アパレル
は、百貨店の店頭をコントロールしたかったのである。完全買取条件では、
店頭に在庫が残ると新規商品の仕入れがストップしてしまう。古い商品は返
品して、新しい商品と入れ換えることは、百貨店、アパレル双方にメリット
があった。

しかし、返品を認めるアパレルにとって、商品が店頭に展開されずに返品さ
れたのではたまらない。自社商品を管理するために、派遣販売員を送り込む
ことは必須条件だったのである。こうして、委託仕入れ+派遣販売員制度は
定着していった。多少の負担があっても、この取引方法を確立することで、
大手アパレルは新規参入を防ぎ、着実に百貨店シェアを伸ばしたのである。

しかし、これらはシステム以前の商慣習と言える。アパレルと小売店がシス
テムでつながれば、取引形態も変わるのだ。

そもそもアパレルが百貨店の返品を恐れるのは、シーズン末にまとめて大量
の商品を返品されるからである。また、百貨店も個性的なアパレル製品を仕
入れられないのは、売れるか売れないかが分からないからである。

この問題を解決するには、百貨店とアパレル双方にどのように利益配分を行
うかをルール化し、取引条件を変動させることである。通常の百貨店の取引
では、仕入先ごとに納入掛率が決まっている。掛率が60%であれば、小売
価格の60%で納品し、百貨店は40%の粗利を受け取る。しかし、粗利と
は正価で売れた時の利益であり、売れ残ってバーゲンセールで販売したので
は、利益が確保できない。

たとえば、百貨店の最低利益保証を行い、一定金額以上売れたら利益をアパ
レルとシェアするように条件を設定する。アパレル側は最低利益保証を家賃
だと思えばいい。そして、売れば売るほどアパレルの利益率が上るように設
定されれば、アパレルのモチベーションも高まるだろう。百貨店も最低利益
が保証され、それ以上の売上が上れば、利益率は下がっても利益は上るのだ
から、売上拡大に貢献しようとするだろう。

売上管理をシステム化し、アパレルと百貨店がシステム連携していれば、掛
け率は実績により、毎日変えることもできる。また、アパレルも、リアルタ
イムで毎日の売上、利益、在庫が把握できれば委託も怖くない。

販売員の経費も、百貨店とアパレルで配分することも可能であり、平場であ
れば複数のアパレルが売上歩合で負担することもできる。勿論、販売員の給
与も固定給ではなく、変動的な実績給にすることで、リスクは減少するだろ
う。

システム以前は「買取か委託」「掛率は何%」という商売だったが、システ
ム連携以降は全てが変わる。掛率交渉も必要ないし、最低条件を満たせなけ
れば売場から退場させるルールを作ればいい。システムにより、百貨店ビジ
ネスに市場原理を持ち込むことができるのである。

以上は、百貨店を例に話したが、全ての業種業態でこうした変化が待ってい
ると言えよう。


執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任