300,「システムの変遷と繊維流通」

2006/02/10

こんにちは。坂口昌章です。
システムのことを考えているので、またシステム話です。

システムの世界では、部分最適化から全体最適化を目指す方向にあるという
記事を目にしました。私にとって、部分最適化と全体最適化という言葉は新
鮮でした。繊維の複雑な流通構造は部分最適化を追求するあまり、全体最適
化が遅れ、国際競争力を失ったとも言えます。

現在のオートクチュール的なフルオーダーシステムの乱立も部分最適化のあ
まり、全体最適化を失いかねません。一方で、全体最適化ばかりを上から押
しつけられても、現場では対応できず、結局、そのシステムは機能しません。
また、部分も全体も常に変化を続けており、最適化の方法も常に変化を続け
ています。この変化に対応することこそ、システムが機能する条件ではない
でしょうか。

市場原理という変化のルールは分かりやすいのですが、リスクヘッジをルー
ルにすることは非常に分かりにくいですね。日本全体がIT、Non−IT
に関わらず、システム的に大きく遅れているのはこのあたりに原因があるの
ではないでしょうか。


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「システムの変遷と繊維流通」

コンピュータシステムの黎明期は、電算室に鎮座していた大型汎用機による
中央集権型システムだった。繊維流通に例えると、問屋流通が全ての流通を
支配していた状況に似ている。産地の情報も市場の情報も問屋に集まり、金
融や物流などの機能まで果たしていた。

あるいは、合繊メーカーや紡績の系列構造にも似ている。自社の糸を機屋に
供給し、製品に加工してから買い上げる。原料から生産、流通までをメイン
フレームのようにコントロールしていた。

次に、オンライン技術やデータベース技術の発達に伴い、現場の端末と中央
のコンピュータが結ばれていく。繊維流通では、支店や代理店が全国に整備
されていく過程だろう。そして、システムは分散化を進めていく。複数のサ
ーバを結び、分散処理が始まる。分散処理は、流通の細分化に等しい。日本
の繊維流通は複雑であり、情報が分断され、流通全体の最適化ができなくな
っていった。

なぜ、流通は細分化していったのか。市場原理が健全に働けば、流通は細分
化しない。むしろ、集約化していくだろう。日本では競争原理よりも、リス
クヘッジが優先された。需給バランス変化のリスクや与信問題のリスクを分
散するために、自らの利益を犠牲にしてでも、安全性を求めたのだ。

システムの分散化は、電算室という独裁体制に現場が反旗を翻した結果かも
しれない。あるいは、ビジネスの意志決定システムにITシステムを合わせ
たとも表現できるだろう。ビジネス側から見れば当然の帰結である。ビジネ
ス組織は、各部署に権限委譲をしながら、経営者は組織全体のマネジメント
をしている。経営者は、全ての情報を判断の材料とするのではなく、必要な
情報だけを選択するシステムを有している。

つまり、部分最適化システムをつなげるというよりも、部分最適化システム
から全体最適化に必要な要素のみを抽出、あるいは必要な要素を自動的に生
成し、それらを集めて決定するシステムを構築するという発想である。ある
いは、2者間の意思決定をトーナメント戦のように連続して行いながら、最
終的に全体の意思決定を行うということか。

部分は常に変化する。全体も常に変化する。更には、全体が更に巨大な全体
の中の個別要素になっていく。最適化のために変化を止めるという発想もあ
るが、変化を止めたのではビジネスの進化も止まってしまう。むしろ、常に
部分最適システムは変化を続けるべきであり、部分と部分の間に存在する空
間を埋める作業も継続すべきだろう。全体最適化を強調するあまり、部分最
適化を犠牲にしたのでは意味がない。

繊維流通の場合は、どのように改革されたのだろうか。中国という並外れた
低コストの生産地が現れ、国内製造業が淘汰され、複雑な流通構造も崩壊し
ていったのだ。

システムも同様のことが起きない保証はない。並外れて安価なシステムが登
場して、現在の複雑なシステムが維持できなくなるかもしれない。中国産や
インド産のシステムが猛烈に普及し国産システムを駆逐する。一時的には
部分最適化も全体最適化も見えなくなり、低価格化の波にさらわれてしまう。
しかし、やがては安価で新しいシステムにより、全体最適化が一気に進むと
いうシナリオである。

勿論、ローテクのアパレル製品とハイテクのシステムは異なるだろう。しか
し、価格がクオリティを駆逐することは珍しいことではないのだ。


執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任