298,「反射神経型ビジネス」と「戦略的思考型ビジネス」

2006/01/13

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。

私は、ファッションビジネスに関わらず今後のビジネスはシステムが重要だ
と考えています。しかし、システム発想を持たない人が多いのも事実。その
原因をたどると、ビジネスそのもののスタイルが反射神経的であることに思
い至りました。だから、戦略思考型になるべし。ということで原稿を書き始
めたのですが、冷静に考えると、反射神経型を否定するのではなく、その良
さを認識する方が国際競争力につながるのではないか、という考えがムクム
クと湧いてきました。でも、その反射神経型ビジネスを戦略的に展開するこ
とが必要なわけですね。



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「反射神経型ビジネス」と「戦略的思考型ビジネス」

日本のアパレルビジネスの主流は「反射神経型ビジネス」だった。臨機応変、
当意即妙。市場の動きをいち早く察知し、即座に対応する。その反射神経を
持つ者が優秀なMDであり、デザイナーというわけだ。反射神経を鍛えるに
は、生まれ持っての才能と訓練が必要だ。しかし、歳を重ねるにつれ、誰で
も反射神経は鈍ってくる。反射神経型ビジネスを続けるには、常に時代と共
に生きている若い人材を補充し、反射神経の衰えた者を現場から外さなけれ
ばならない。

日本のファッションビジネスで反射神経型ビジネスが有効なのは、日本のフ
ァッション市場が反射神経的に動いているからだろう。社会的ステイタスや
計画的なワードローブではなく、目新しさ、好き嫌い、媒体の情報等により
常に変化を続けている。その変化に対応するには、ある種の反射神経が必要
なのだ。

この種のビジネスに対して、戦略的思考で対応しても、すぐに効果が現れる
ことはない。戦略や論理的思考が結果を出すにはある程度の時間と資本投下
が必要である。あくまでアベレージの勝負であり、一発逆転ホームランを狙
うことには向いていない。

日本のアパレル企業が中国市場に進出する際、どのようなアプローチを行う
のか。反射神経で勝負するのであれば、企画の現地化と日本で培った徹底し
た営業ワークが必要である。中国市場を肌で感じて、臨機応変に企画をアレ
ンジし、市場に投入する。その結果をすぐに次の企画に生かすというサイク
ルをいかに短くできるかが勝負だ。営業活動もバイヤーやFCオーナーへの
接待やコミュニケーションを通じ、人間的なつながりを持つべきである。泥
臭い営業戦略は、欧米企業には真似ができないだろう。

日本型戦略が実行できないのであれば、欧米型の戦略的思考型ビジネスを志
向することだ。期中企画ではなく計画的生産を行う。その代わりに、徹底し
たプロモーションを行い、消費者への認知度を高める。この場合、短期的な
資金回収ではなく長期的な市場浸透戦略になる。

ここで問題になるのは、これまで日本のアパレル業界は戦略的思考型ビジネ
スに慣れていないことである。同時に、日本では可能だった反射神経型ビジ
ネスも、中国では実行が困難なことだ。

私はこれまで反射神経型ビジネスを評価していなかった。ビジネスが未成熟
ゆえだと思っていたのだ。将来は、欧米型の戦略的思考型ビジネスが主流に
なるだろうと。

しかし、現実はそうなっていない。むしろ、「反射神経をいかに維持するか」
「そのための人的資源をどのように育成し、ローテーションしていくのか」
「いかに素早く現場に対応していくのか」を実行した企業が、着実に成果を
上げている。企業が高齢化していく中で反射神経が鈍っていることが最も大
きな問題なのである。

日本と中国を比較するといろいろなことが見えてくる。アジアとヨーロッパ
の違いも見えてくる。

反射神経型ビジネスを戦略的に運営すること。漠然としているが、日本企業
の成功モデルの一つではないだろうか。


執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任