292,「プロデューサー機能の不在」 2005/10/21
みなさん、こんにちは。坂口昌章です。 =================================== 「プロデューサー機能の不在」 アパレル企業のブランドを組み立てる人材が足りない。個々の専門家はいる が、全体を組み立てる人材が少ない。企画生産についても、個々の商品をデ ザインすることはできても、全体の構成を組み立てられない。布帛は分かる が、ニットは分からない。工場や機屋と話ができない。 イベントや展示会でも、プロデューサーの必要性が問われている。全体を統 一するには、一人の目でチェックするほかはない。しかし、日本の組織は合 議制による意志決定が多い。一人の人間にプロデュースさせるケースは稀で ある。そもそもプロデュースという業務が理解されていない。プロデュース に費用がかかるという認識もほとんどない。 百貨店や商業施設のコンセプトプランニングを行う人材も少ない。個々の商 品については語れるが、商品と環境とサービスをトータルに発想することが できない。本来、コンセプトプランニングは個人が発想するしかないのだが、 合議制では客観性が求められる。そして、個人の発想よりも、一般に認知さ れているトレンドを優先してしまう。その結果、どこも同じようなコンセプ トテーマになるばかりか、短期間で陳腐化してしまうのである。 トレンドは陳腐化が早い。陳腐化しにくいのは、アートであり、個人の思い 込みである。ファッションで言えば、トレンドを追いかけた服は陳腐化する が、個性が際立つデザイナーの服は陳腐化しない。時代を超えるのだ。 ボトムアップの組織と分業化はプロデュース機能を必要としない。そもそも 全体をコントロールするプロデューサーを専門職と考えられない。権限と立 場は等しくなければならない。従って、全体を統括するプロデューサーは組 織のトップに立たなければならないと考えてしまう。しかし、日本型のトッ プはプロフェッショナルではない。ボトムアップで上がった意見を調整する 役割である。これはプロデューサーと正反対の存在である。 プロデュースという作業は、トップダウンの組織と個人優先の思想がなけれ ば実現しない。そこで、プロデュース機能をアウトソーシングする動きが出 ている。しかし、それを最終的に統括するのはボトムアップの旧来の組織で ある。そこに齟齬が生じる。 全体をコントロールするプロデュースという仕事は、権限と同時に責任も生 じる。成功しなければ解雇あるいは契約打ち切りになるのが一般的である。 リスクが高い代わりに報酬は高い。ハイリスク・ハイリターンである。 しかし、アウトソーシングのプロデューサーに対して、ハイリスク・ハイリ ターンを求めるだろうか。ハイリスク・ローリターン、あるいは、ローリス ク・ローリターンのケースが多いのではないか。これではプロデューサーは 育たない。責任と権限とリターンという条件が揃ってこそ、人材は育つので ある。 現在、ITベンチャー企業が株を買収し、企業の支配権を握ろうとする動き が目立つが、これは日本企業がグローバルに変革する動きとも理解できる。 彼らの動きはボトムアップではない。トップダウンであり、いきなり実力主 義で会社に変革を迫るのだ。強引なプロデューサーが外部から参入してくる 時代なのだ。 こうした強引な手法を嫌うのならば、自身で企業を変革し、経営トップの考 え方を変革しなければならない。日本全体がこの変革を必要としながら、既 得権を持つ抵抗勢力は強い。しかし、時代は嫌でも変わっていくのだ。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) ( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 |
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