290,「プロジェクトが成功しない理由」

2005/09/24

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
ファッション業界では様々な産業政策やイベントが企画される。しかし、ど
うもうまくいかないのだ。そして、何が悪かったのか、と考える。企画内容
や運営体制が問題になることはあるが、どうももっと根源的な原因があるよ
うな気がしてならない。その問題点を私なりに考えてみた。


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「プロジェクトが成功しない理由」

国家存亡の危機。それを解決するために、国家の指導者達が集まる。大統領
が問う。「この問題を解決できるのは誰か」。担当大臣が答える。「それは
あの男しかいない」 遠い国で自分の仕事をしていた男が突然呼び出される。
そして、国家危機を救うためのプロジェクトリーダーとして働くのであった。
パチパチ・・・。アメリカ映画によくあるシーンだ。

別の国のお話。国家存亡の危機。それを解決するために担当大臣が呼び出さ
れる。「これは君の管轄だ。何としても解決するように」厳命が下される。
担当大臣は担当責任者を呼びつける。「これは君の管轄だ。何としても解決
するように」担当責任者は部下を呼びつける。「これは君の管轄だ。何とし
ても解決するように」 担当者は悩む。自分にその能力はない。そこで大手
広告代理店を呼びつける。「国の事業だから予算がつく。何とか引き受けて
くれ」担当者は一安心。あの有名広告代理店に頼んで、実現しなかったとし
ても、私の責任ではない。誰が担当してもできないのだから。パチパチ・・・。

アメリカ映画のようにならないのは、「問題解決には、その問題を解決でき
る人に任せなければならない」という常識を共有していないこと。専門家の
データベースが存在しないこと。人間は平等なのだから、一部の専門家しか
できないことなんてあり得ない、と信じていること。問題解決にはその責任
者が行なうべきであり、責任者に能力がなければ組織で解決すればいいと考
えていること。それが無理ならば、お金の力で外部を使えばいい。つまり、
実力よりもポジションや立場を優先しているのだ。

両者の対応は全くことなる。前者では、あるプロジェクトが存在したら、そ
れを実現するために必要な人材(特にリーダー)、資金等をリストアップす
る。そして、リーダーを決定し、使命を与える。次に、プロジェクトを実現
させるための組織をリーダーに作らせ、必要な資金を見積もらせ、その資金
を与える。そしてリーダーは責任を持ってプロジェクトを遂行する。しかし、
結果責任は厳しく問われる。

後者では、立場が優先されるので、まず責任者が任命される。その場合、責
任者がリーダーである必要もないし、実務遂行の能力があることも求められ
ない。そのポジションにふさわしい人物か否かが問われる。

そして、多くの場合、そのプロジェクトに関係する関係機関の代表からなる
委員会が設置され、そこで対応を協議する。この委員会が正しく機能すれば、
実務遂行能力のある人間にリーダーを任せる場合もある。しかし、実務能力
のない者がその職務を担う場合もあり得る。だが、結果責任を厳しく問われ
ることはない。集団で運営されるプロジェクトでは、「個人を責めてはいけ
ない」という暗黙の了解があるのだ。それならば、自分ができなくても、や
った者勝ちである。

こうした問題は国家存亡の危機の時だけ発生しているわけではない。民間企
業の通常業務でも同様である。業務を遂行する能力がなくても、担当者とい
うだけでそのプロジェクトが任せられる。社外から人材を登用することはな
い。外注、下請けで仕事を振ることはあっても、リーダーにするケースは皆
無だろう。

こうしてプロジェクトは遂行される。成功するのは、偶然、立場と実力が見
合った場合だけだ。昔は、立場と実力は一部の階級に集中していた。したが
って、このような問題は起きなかったのだろう。しかし現代において、両者
の一致はかなり確率が低いのではないか。


執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任