281,「個人の責任を追求するのはタブーか」

2005/06/03

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
日本では個人の責任を問うことを好みません。個人が悪くても、そのことへ
の指摘はせずに、個人を取り巻く環境や組織の責任にします。

個人の責任を問わないことは、反面、個人を軽視することです。最近、自己
責任という言葉が流行っています。こんな言葉が流行するということは、自
己責任が当たり前だという意識がないことを表していると思います。

個人の責任を追求することと、個人の人格を認めることは矛盾しないと思い
ます。日勤教育のような精神教育が存在すること自体、JR西日本は個人を
横並びに考えていると思うのです。今回の意見はある種、日本ではタブーで
しょう。多くの反論、お待ちしています。


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「個人の責任を追求するのはタブーか」

JR西日本福知山線の事故は、どうも運転士のスピードオーバーが主たる原
因のようだ。JR西日本という企業体質にも多くの問題があるだろうが、今
回の事故の直接的責任は運転士の過失ではないだろうか。

罪を憎んで人を憎まず。日本ほどこの言葉が浸透している国はないだろう。
今回のような事故ではなく、単なる性格異常者による殺人事件が起きても、
個人の責任を追求せずに、社会の責任、政治の責任を主張するケースも多い。
個人の責任を追求することは『悪』であり、その個人を生み出した環境や体
制を批判することが『善』であるかのような共通認識がある。

個人の責任を曖昧にすることは、一見、個人を守っているようだが、実は個
人を否定している。個人主義が基本である西欧社会では、集団で起こした事
件でも最終的に個人の責任を追求する。靖国神社参拝で問題視されているA
級戦犯祭祀も同様の問題だ。罪を憎んで人を憎まず。人間死んだら皆仏様。
こういう日本的常識で言えば、A級戦犯云々と区別すること自体がおかしい
のであり、日本のために戦死した人を祀って何が悪いという理屈になるだろ
う。しかし、個人主義ではあくまで個人の責任が追求されるのだ。そうしな
ければ、責任を果たしたことにならないという発想である。

今回の事件も、まず個人の責任を追求するべきではないか。そして、事故が
あった場合は、個人が責任を取られるのだから、個人は企業に対して対等の
要求ができる。運転士の遺族は、会社に対して訴訟を起こし、不当労働や不
当教育の是非を司法に問うべきではないか。また、個人の責任を追求すると
いう姿勢があれば、運転士の管理職の責任、教育に問題があったとすれば、
その責任者の責任、そして最終的には役員や経営者の責任までさかのぼるこ
とができるのだ。企業体質を変革するには、経営陣を交代し、業務プロセス
を見直し、意思決定システムや伝達システム、教育システムや、業務の基幹
システムを再構築しなければならないだろう。そのためには、個人の責任を
もっとしっかりと追求すべきだと思うのだ。

企業だけが責任を追求されるのであれば、個人は常に企業に隷属しなければ
ならない。その代わり、個人は生活を保証される。責任と権利は常にセット
である。責任を放棄すれば、権利も放棄しなければならないのだ。個人の責
任を付け入れない限り、企業体質も変わらないのだ。

日本は組織を重視し個人を軽視する。その組織もあくまで平時の組織であり、
セクショナリズムを基本とした組織である。こうした体制が有効な時代や産
業分野もあるのは確かだ。日本は組織優先で、経済成長をなし遂げた。これ
は日本の成功体験である。しかし、今回のJRの事故をはじめとして、次々
と事故が起きているのを見ると、これまでのシステムが崩壊しているように
感じるのである。個人の支える教育の問題、セクショナリズムが強く、全社
的な戦略が立てられない組織の問題。これらが悪循環して、日本全体のシス
テムがゆがみ、制度疲労を起こしているのではないか。

運転士の責任を追求しないということは、事故車両に乗り合わせた社員に電
話で出社を指示した担当者も責任追求されないことだ。そしで、非常時に対
応したマネジメントができず、全社員に非常時の対応を指示できなかった経
営者の責任も追求されることはないのである。 


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執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任