277,反日の気持ち、日本の気持ち 05/05/06
みなさん、こんにちは。坂口昌章です。 反日デモを見て、日本人は思う。「昨日まで友好的だった中国人が突然反日 になってしまった。中国なんて怖くて行けないな。いつ、元に戻るんだろう。」 この中にいくつもの誤解がある。まず、昨日まで友好的だった中国人は、デ モ翌日には友好的に戻っているはずだ。確かに、デモ当日は日本人でいるこ とだけで攻撃されそうな気がするし、日本語を話すのも躊躇われる。でもそ れは一日だけのことだ。 中国人は、小さいときから反日教育を受けている。また、年間に数日の抗日 運動に関する記念日があり、その時には大々的な反日キャンペーンを行って きた。反日というテーマは中国人にとっては、慣れ親しんだものなのだ。た だ、これまではデモそのものが認められていなかったし、反日というインプ ットだけされて、アウトプットする場がなかったのである。だから、それが 許されるならば、どんなに気持ち良いかしれない。ワールドカップアジア予 選の北京においても、サポーターが反日を叫んでいたが、参加者は「とても 楽しかった」と言っていた。でも、北京のスタジウムで暴れた彼らがその後 日本人を襲撃したという話は聞かない。単に一時的なストレス解消であり、 翌日には現実世界に戻っていたのである。 もし、反日デモに参加した人が日本嫌いだとすれば、彼らは昔から日本嫌い だったのであり、周囲の日本人がそれに気がつかなかったにすぎない。むし ろ、日本人の多くは周囲から嫌われていることにも気づかず、北京や上海の ホテルのロビーや飲食店で声高に日本語をまき散らし、日本語の分かる中国 人が聞いたら憤慨するような内容の話を平気で垂れ流してきたのだ。それで も、中国人は日本人を襲撃しなかったのだから、彼らの忍耐こそ賞嘆すべき だろう。 中国共産党が一党独裁で、選挙も行わずに権力を握っている理由は、「悪し き日本軍を中国から追い払ったのは共産党である」ということによる。だか ら、彼らは自らの存在意義を守るためにも、反日キャンペーンは継続しなけ ればならない。そうでなければ、普通選挙を望む声が吹き上がるに違いない。 中国政府が最も警戒しているのは、農民暴動であり労働者デモである。中国 国民と公安が対立してしまえば、第二の天安門事件に発展する可能性もある のだ。それだけは何としてでも防ぎたいといのが本音だろう。それに比べれ ば、卵やトマトを投げたり、投石でガラスが割れることなど何でもない。日 本では、公安はデモ隊に対して何もしないと批判している。彼らがもしデモ 隊に暴力を振るえば「なぜ、日本の味方をするのか」という反発になるだろ うし、富と権力を独占している階層への不満につながる可能性は大きい。従 って、反日という平和なテーマのうちはいいが、もし、デモ隊の中で反政府、 反体制を叫ぶ者がいれば即座に排除されたに違いない。また、日本人を襲撃 したり、死傷者が出るような事態が生じれば、即座に日本人を保護すること も指示されていただろう。彼らはそのためにそこにいるのであり、平和な反 日デモを妨害するために配置されているのではないのだ。 一方、日本人は「お互いさま」という観念を持っている。日本人がはっきり と意志表示しないのも、明確に相手の非を主張すれば、お互いさまというこ とで、今度は自分の非を指摘されると考えているからである。日本人は他人 に迷惑をかけないことを第一に教えられるが、それは相手に迷惑をかければ 自分が迷惑をかけられても文句は言えないと考えているからである。日本人 がもし公衆の面前で「反中国デモ」をするとしたら、余程耐えがたい状況に 陥るか、もう関係修復など考えなくてもいいという切羽詰まった事態しか考 えられない。勿論、そんなデモがあれば、その時だけでなく継続的に中国人 を嫌うだろうし、嫌がらせを続けるだろう。日本人の発想でいえば反日デモ など許されるものではなく、「反日デモをしたからには日本で中国人が襲撃 されても文句は言えないだろう」という極論さえ出てくるのである。 一方、中国人ははっきり自分の意見を言わなければ相手には伝わらないと考 える。主張が異なる相手と口論したとしても、相手の理が分かれば仲直りす るのも早い。日本人の場合は、口論は理屈ではなく感情的な対立に直結して しまう。だからこそ、日本人は曖昧な表現を好むし、必要以上に対立を避け るのだ。 その意味で日本人の面子と中国人の面子は異なる。中国の政府高官が決して 反日デモの非を認めないのも面子を守るためだろう。しかし、中国側が非を 認めないと,それを主張した日本側も面子をつぶされていることになる。し かも、連帯意識の強い日本人は、日本の大臣が侮辱されることは、日本人全 体が侮辱されたと感情で感じるのだ。中国人の面子は「理」にあるが、日本 人の面子は「情」にある。そして、情の方が根強く、ある意味で陰湿なので ある。 中国人にとって、「たかが一日だけの反日デモに対して、なぜ日本人は継続 して文句を言うのか」と思うだろう。日本人にとっては、一日だけ反日デモ などというものは信じられないのであり、「一日の非を認められないような 人とは一生付き合えない」と感じてしまうのである。 日本人も中国人を理解しなければならず、中国人も日本人を理解しなければ ならない。中国は経済発展してから間もない国であり発展途上である。国際 的なエチケットを理解していない面もある。同時に、日本人もドメスティッ クに生きてきたという事情もあり、外国とのつきあいや異文化コミュニケー ションに慣れていない。日本、中国の双方が国際社会に慣れていないのだ。 それがあまりにも急速に接近したために、様々な摩擦が生じているのは確か だろう。今回の反日デモも、そうした摩擦熱を少し冷ましたものだと理解し た方か良い。これを機会に双方とも反発するのではなく、相互理解につなげ ていかなければならないだろう?本と中国の関係はこれからが本番なのだ。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) ( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 |
|
|