254,メーカーに問われる真の企画力

2004/11/12

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。

問屋の力が弱くなった結果、メーカーが強くならなければならないのですが、
そのあたりを勘違いして、問屋の権利を侵害しているという事例を聞きまし
た。強いものには巻かれろ。弱いものには強く出ろ、ということかもしれま
せんが、あまりにも短絡的です。

私はどちらかと言うと、構造改革推進派であり、開国派でありますが、基本
的にはメーカー側に立っていると思っています。メーカーが企画し、生産し、
販売するというのが国際的な姿であり、日本のように問屋とメーカーが分離
している姿はコスト高になるのではないか、と心配しています。

しかし、私はアナーキストではありません。悪しき商慣習は変えるべきと考
えていますが、商慣習を全て否定するものではありませんし、約束を破って
良いとも思いません。業界で仕事をしていくには、人脈も信用も大切です。

強くなったら威張る、弱くなったら卑屈になるというのは嫌ですね。常に個
人の尊厳を大切に生きていきたいものです。


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◆メーカーに問われる真の企画力

産地のメーカーの中には、技術万能主義者が存在する。ビジネスの主体は技
術であり、その技術を持っているのはメーカーだから、メーカーは偉いとい
う主張である。特に、昨今、問屋の力が弱くなったために、「問屋なんかメ
ーカーの技術で食っているだけだ」という声さえ聞こえる。

しかし、技術の占める要素は減少の一途である。具体的にいうと、アパレル
製品の商品原価率は減少を続けている。私が就職した25年前には、アパレ
ル製品の商品原価率は35〜40%程度だった。ここでいう商品原価とは、
アパレル製品を構成している生地、付属、副資材、縫製工賃が全て含まれて
いる。それが現在では、25%以下に抑えることが命題になっている。中国
生産の商品の場合、複雑な流通経路を通っているため実質的には20%を切
っているだろう。

商品原価率に含まれない要素には、売上を直接左右するデザイナーやパター
ンメーカーの給与、販売員の給与、店舗の経費、宣伝広告費等が含まれてい
る。つまり、こうしたソフトウェアやブランドイメージ向上に対する投資を
行わないと売れない時代になっているのである。

たとえば、無地の生地を考えてみよう。確かに、糸を選び、織りの密度や組
織を決定しているのは機屋である。また、原料の糸に関しては、紡績や撚糸
屋の技術。染色に関しては染工場、風合いに関しては整理工場の技術が問わ
れる。それらの技術が組み合わさって、テキスタイル商品になっているのだ
が、最も売上を左右するのは「色」である。生地そのものを作る技術に匹敵
するのは、色というソフトなのだ。

この場合、色を出す技術と言えなくはないが、ある意味ではセンスであり感
性でもある。需要が多く供給が少ない時代には、商品を供給することが即ち
利益につながった。したがってメーカーが偉かった。メーカーが存在しなけ
れば、問屋も小売店も利益をあげられないのだ。

供給過剰の時代になるとメーカーの立場は弱くなる。世界でオンリーワンの
技術なら価値はあるが、どこの工場でも持っているような技術では価値がな
い。むしろ、色や形を決定するためのデザイン能力やセンスが問われるので
ある。勿論、そうだからと言って、メーカーをないがしろにして良いという
わけではない。メーカーがなければビジネスができないという意味では同じ
ことなのだ。しかし、技術至上主義のような主張が時代に合わなくなってい
るのは事実だろう。

問屋や流通業が弱くなっているから、「企画はどうでもいい」「売れるモノ
をコピーすればいい」というのは暴論である。むしろ、メーカーはこれまで
問屋に依存していた企画力とプレゼンテーション力、営業力を身につけなけ
ればならない。そして、オリジナルブランドを構築し、自立したビジネスを
展開しなければならないのだ。その意味で、問屋機能が衰退しつつある現在、
メーカーもまた自己改革しなければならないのである。

立場が強いと威張る。立場が弱い相手を見下すという、これまでの力関係に
よる商売は通用しない。そんな商売では後継者も育たないはずだ。問屋とメ
ーカーの関係もこれまでの力関係による封建的な結びつきではなく、本当の
意味でのパートナーシップが求められている。それには互いを尊重しあい、
約束を守ることが不可欠である。


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執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任