249,なぜ、目標を持たないで行動できるのか?

2004/10/01

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
今週も先週の続編のような内容になってしまいました。
「何とか起業のための教育ができないものか」と考えているのですが、かな
り難しいのです。まず、自立するという意味が伝えにくい。経済的な自立は
分かりやすいのですが、自立した考え方を持つのは難しい。

今回は、「自分は何が分からないのかが分からない」という課題について考
えてみました。自分でも「何が分からないのか分からない」ようでは、こち
らが、何を教えたらいいのか分からないのは当たり前なのかもしれない、と
錯覚してしまいます。

危ない、危ない。


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◆なぜ、目標を持たないで行動できるのか?

ファッション専門学校の学生から、「自分が何が分からないか分からない」
「就職してから、何が分からないかを分かるようになりたい」と言われた。
禅問答のような会話だが、そこまで分からないのか、と愕然とした。

まず、ほとんどの人間は「分からないことだらけ」の中で生きている。だか
ら、分からないことが多いのは当たり前であり、何の問題もない。しかし、
自分が必要としていることなのに、それが「分からない」という状況は問題
だ。「分からないことが分からない」というのは、まず「自分が何を必要と
しているのか」が分からないことだろう。

「自分が何を必要としているか分からない」ということは、「自分に明確な
目標がない」ということにつながってくる。通常なら、目標がないのに努力
はできないし、勉強もできない。しかしなぜか、大多数の日本人は目標がな
くても努力できるのだ。

振り返ってみれば、日本の戦後教育とは「目標を持たせない」ことが大きな
テーマだったのではないか。

小さい子は、何に対しても「なぜ」と聞く。「なぜ」と考え、その答えを見
付けることが「考える」ことの訓練になっているのだと思う。しかし、親や
教師はその問いかけに根気よく答えているだろうか。むしろ、「なぜ、なぜ
って聞くんじゃありません」「とにかく、言われた通りにすればいいの」と
答えることが多いのではないか。理由を言わないで、服従することを覚えさ
せることは、思考力を奪う訓練でもある。

なぜ、勉強しなくてはいけないの?なぜ、遅刻してはいけないの?なぜ、朝
礼で整列しなくてはいけないの?なぜ、皆で揃って行進しなければいけない
の?

こうした疑問は封じ込められ、服従することを覚えさせられる。更に、子供
たちは友達との間で協調することを教え込まれる。自分が嫌だと思っても、
そうしないと仲間外れにされるから、嫌なことでもやる。そして、友達とは
当たり障りのない話だけをするようになり、相手を批判しなくなっていく。
そうして健全な批判精神というものが奪われていく。

「なぜ」を奪われ、「批判精神」を失うと、常に言われたことだけに服従す
る人間が育つことになる。行動には必ず目的が伴うものだが、その目的は常
に与えられるだけであり、自分で目的を設定するという訓練は全くと言って
いいほど、なされない。

幼稚園、小学校、中学校、高校、大学という過程の中で、自分で目標を設定
し、そのためには、何が必要かを考え、それを実践していくという教育がな
されているだろうか。与えられたカリキュラムを批判せずに受け入れ、何の
ために良い成績を取るべきかを考えることもなく、テストに追われているの
だ。社会に出れば、今度は企業の中で「なぜ」を封じられ、「目標」を与え
られ、企業のために働き続けることになる。いや、なっていた。就職がある
時代までは・・・。

「就職がない」という状況は、常に与えられきた目標が突然なくなり、生き
る目標を自分で探さなければならなくなる、ということでもある。これは非
常に健全なことであり、人間が自立するためには必要不可欠なことでもある。
目標を自分で設定するというのは、自立することを意味する。そして、自立
は、服従しないことを意味する。

日本の教育の最も大きな問題は、「被占領者」「被統治者」「被支配者」の
教育であったということだ。今後は、健全な個人主義を育成し、自立した人
間として教育しなければならないだろう。決して、「愛国心を養う」なんて
いうことではないはずだ。自分の人生の目標は自分で設定すべきものであり、
愛国心や愛社精神により強制されるものであってはならない。そうすれば、
「分からないことが分からない」という状況には陥らないはずである。


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執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任