246,中国生産の危機

04/09/10

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
今回は、中国生産がやりにくくなっていることについて警鐘を鳴らしました。

中国市場進出ばかりが課題になっていますが、その基本となる中国生産の状
況も刻一刻と変化しています。中国経済が成長し、内需が伸びること。クォ
ーター撤廃を当て込んで、欧米向け輸出を目指す企業が増えていること。こ
れらの事実は、日本向けの仕事の優先順位が下がることを意味しています。
しかし、日本のアパレル企業でこうしたことに気づいて、生産体制を固めて
いるところがどれほどあるのでしょうか。多くは、商社に依存しているため
に、中国の変化を肌で感じていません。

変化に気づいた時には、生産が間に合わない。工賃が合わない。納期遅れが
頻発するという事態になっているでしょう。
 
日本企業はブームに動かされると言います。今こそ、足元を固める時期だと
思います。


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◆中国生産の危機

最近、繊維業界は中国市場への進出に興味が集中している。しかし、その裏
で、中国生産の問題が起きていることに注意したい。

日本のアパレル企業の注文は面倒で手間がかかり、納期は短く、その割に工
賃が安い。こういう仕事に対し、中国の工場は次第に嫌な顔を見せるように
なっている。欧米向けの仕事の方が簡単で生産ロットが大きく、納期もゆっ
たりしている。だから、日本の仕事よりも欧米向けの仕事をしたいと言って
いるのだ。

こうした問題は、日本の産地の工場が抱えていた問題に等しい。多くのアパ
レル企業は、自らの姿勢や企画の方針を変えることなく、中国に持ち込んだ
に過ぎない。それでも、初期の頃は、中国の縫製工場も勉強だと思って採算
が悪くても我慢してきた。

「最初は小ロットだが、軌道に乗れば生産ロットも増える。だから今回だけ
はこの数量でやってくれ」「最初は様子を見ているので工賃も出せない。で
も、慣れてきて品質に問題がなくなれば工賃も払える」等々の言い訳に対し
ても、素直な彼らは信じたことだろう。しかしそんな言い訳は方便であり、
どんなに頑張っても生産ロットは増えないし、工賃も上らないという事実も
ようやく理解してきたのである。

アパレル企業の担当者は、縫製仕様の違いや、関税の違いなど意に介さず、
「この値段じゃなきゃ通らないんだよ。分かってるだろ」と、十年一日のご
とく繰り返しているに過ぎない。全く勉強していないし、現在の状況を理解
しようともしていない。工場はいくらでもあると思っているのだ。

勿論、中国には縫製工場はいくらでもある。でも、日本仕様の面倒な仕事を、
安く丁寧に縫製する工場は確実に減少している。その理由は、「面倒な仕事
は結局儲からない」という事実を中国の工場は学んだからである。日本の縫
製工場ならば、儲からない仕事でも義理と人情で引き受けてきた。しかし、
中国の経営者には理不尽な理屈は通用しない。量がまとまって、簡単な仕事
の方が確実に利益が上るのであり、そうでない仕事は断った方が良いのだ。

近い将来、中国生産の工賃も二極分化が始まるだろう。単純な大量生産は工
賃が上ることはないだろうが、細かく面倒な仕事の工賃は高騰するに違いな
い。面倒な商品は高い価格設定をしなければならないという当たり前の事実
に直面する日は近いのである。

中国市場への輸出振興も良いが、足元の中国生産の問題の方が優先順位は高
いのではないか。以前から指摘している通り、商社への過度な依存はアパレ
ル企業の存在意義を揺るがすことになる。商社に依存しない生産体制を構築
し、次にその製品を中国国内でない半する方法も考えることが必要であり、
その次の段階でアメリカ市場、ヨーロッパ市場等に進出することを考えるべ
きだろう。中国生産を上手く活用することこそ、日本のアパレル企業がグロ
ーバル企業になるための基盤である。その基盤ができれば、アジアから世界
市場を狙えるのだ。

アパレル企業は、自社の生産体制を自らの目で再確認すべし。そして、縫製
工場との取組について膝を交えて話し合うべきである。商社段階では、腕の
よい中国工場の取り合いが始まっている。場合によっては、短サイクル生産
ばかりではなく、計画生産も必要になるだろう。本当のパートナーシップと
は、わがままを聞いてもらうことではないのだ。


執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任