241,日本アパレルの中国市場参入に向けた可能性と課題(前半) 04/07/30
みなさん、こんにちは。坂口昌章です。 =================================== ◆日本アパレルの中国市場参入に向けた可能性と課題(前半) 〜中国の見本市出展の次に打つべき戦略とは〜 1.日本ブランド集積フロアが実現しない理由 2003年の春頃から、中国の百貨店に日本ブランドの集積フロアができる という記事が何度も業界紙を賑わせた。ところが、未だに日本ブランドフロ アは出現していない。しかし現在でも、複数の案件で「日本ブランドの集積」 というコンセプトは生き続けている。 私自身も昨年からその種の仕事に関わってきた。その経験から、どうして日 本ブランドフロアが実現しないのか。また、なぜ現在でも日本ブランドフロ アというコンセプトが継続しているのかを説明したい。 まず実現しない理由だが、第一に中国の百貨店の取引システムがあげられる。 中国の百貨店は、完全に場所貸し業である。その意味では、駅ビル等への出 店と考えたほうがいい。百貨店が商品を仕入れるのではなく、テナントに固 定家賃か売上歩合で場所を貸すという形態であり、保証金も存在する。売上 は百貨店のレジで行われるが、そこから家賃、売上歩合等の管理料を差し引 いてテナントに売上が支払われる。基本的に商品を仕入れるという形態では ないため、店頭での商品管理、商品リスクは出店者が負担しなければならな い。(一部の百貨店では、日本と同様に商品の仕入れ機能を持とうとする動 きもあるようだが、まだ具体的な話は聞いていない) 中国は不動産バブルの真っ只中であり、不動産業を営む財閥グループは百貨 店を建設し、テナントさえ集まれば利益を確保できるという構図になってい る。したがって、百貨店運営のノウハウをほとんど持たない企業も多い。 第二には、日本企業の出店を担当するエージェントの問題である。中国百貨 店が日本企業に対して直接出店依頼を行うケースは少ない。中国の百貨店は 「日本企業に出店して欲しい」と考えているだけだ。そこに、「私は日本企 業を集めましょう。その代わり、百貨店が手にする利益の一部を手数料とし て支払ってくれ」という人が出現する。 しかし、この段階で正式契約を結ぶ事例は少ない。百貨店側は「出店が決ま ってから契約すればいい」という考えだし、エージェントも「リスクのない 権利ビジネスであり、出店が決まってから報酬を受け取る」という認識しか 持っていない。 ここに欠落しているのが、フロアコンセプトの立案やゾーニング計画という ソフトに対する費用である。話だけで進行しているうちは良いが、具体的な プランを出す段階になると、ソフトに対する費用を負担する人間がいないこ とになる。エージェントに資本があれば良いが、ノーリスクの権利ビジネス と考えている人はお金を持っていない。この段階で計画がストップしてしま うのである。 第三の理由は、日本企業に対する卸売権、小売権の許可が認められないこと である。中国は2001年にWTOに加盟した。しかし、流通や小売に対し て完全に門戸を開いたわけではない。徐々に規制は緩和されているが、現状 では、卸売や小売を行うにはライセンスが必要であり、外国企業がこのライ センスを取得するのはかなり困難である。 つまり、中国百貨店で自社製品を販売するには、こうしたライセンスを取得 している企業と連携し、そこの口座を貸りるような形を取らなければならな い。この場合、その企業に対する信用が問題になる。信用できる相手であれ ば全く問題なく、中国市場に参入することができるだろうが、信用できない 相手であればトラブルが起きる可能性は高い。 こうした現状を十分に理解しないままに、中国百貨店、エージェント、日本 の出店企業のそれぞれの思惑ばかりが先行すると、どこかの段階で計画は頓 挫してしまうのである。 勿論、現在存在する全ての案件に問題があるわけではない。実際、日本のコ ンサルティング企業が中国の国営百貨店とテナント誘致等の長期契約を交わ したという情報も確認している。また、アパレルウェブとユー・エフ・オー の提携によって実現した「日本企業の中国出店サポート」の利用企業で、上 海の久光百貨に出店した企業のように、実績を上げているケースも存在する ことを申し添えておきたい。 2.中国の百貨店が日本ブランドを欲しがる理由 中国のファッション市場は三つに分かれている。トップが欧米の一流ブラン ドであり、専門の高級ショッピングモールを形成している。第二が百貨店で あり、中国のアパレルの他、台湾、香港、韓国等のブランドで構成されてい る。百貨店で展開されているブランド群は、地方都市ではフランチャイズ店 として路面店で展開される例も多い。第三は、市場を含む一般の小売店であ り、非常に安価な商品が展開されている。 ほとんどの百貨店は同じようなブランド構成であり、日本のナショナルブラ ンド全盛期を思わせる状況である。現在、ほとんどの百貨店は新規出店計画 を持っている。数年のうちに現在の2〜3倍の店舗数に成長するのは確実で ある。そうした多店舗化に伴い、各百貨店では差別化戦略が課題になってい る。その差別化戦略の目玉として「日本ブランド」が捉えられているのであ る。 中国の消費者にとって、日本ブランドの注目度は高い。情報源の第一はテレ ビドラマである。衛星放送、ケーブルテレビにより、日本のドラマが放映さ れており、その中に出てくる日本ファッションが注目されている。また、中 国語訳されている日本のファッション雑誌は7割の記事が日本語版の直訳で あり、小売店では目にしないが、日本で販売されているブランドについては 熟知しているのである。日本ブランドは、実際に店頭で購入することはでき ないが、情報だけで憧れを増幅しているのである。 こうした日本ブランド人気に目を付けて、中国企業が日本語のブランドを展 開している例も目につく。JAPANファッション、原宿ファッション等と 表示したいくつかの日本語のブランドは、日本では全く目にしたことがない ものだ。 偽物でさえ人気を集めるのだから、本物の日本ブランドが集積されれば、注 目を集めることは必至であると考えるのは自然だろう。しかも、百貨店の人 も外国企業に対する法律を熟知しているわけではないのである。 今後の中国ファッション市場は、欧米の一流ブランドと百貨店ブランドの中 間にあたるベターゾーンが隙間市場として注目されるだろう。台湾、香港ア パレルもそのゾーンを狙ってくるはずである。勿論、中国のアパレル企業も 多ブランド化を進めてくる。日本ブランドは期せずして最も期待されるゾー ンの中核に位置しているのである。(続く) 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) ( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 |
|
|