232,スロービジネスのすすめ

04/05/21

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
私はこれまで厳しいビジネスの世界を目指して生きてきました。でも、それ
が本当に良いことなのかは分かりません。また、自分の生き方を他人に強制
することが良いことかもわかりません。

全国の産地を回っていると、厳しいビジネスへの参入を指導することが良い
ことなのか、疑問を感じています。自立事業や輸出振興事業の最も大きな問
題点は、「競争の激しいビジネスが正しい」という思い込みではないでしょ
うか。

勿論、外貨を稼ぎ、国の経済を支えるのは、競争の激しい方のビジネスでし
ょうし、それを国や行政が支援するのは当然でしょう。でも、中小製造業者
当人たちにとっては、どうなのでしょうか。

皆さんがゆるいビジネスに移行するのであれば、私も新しい仕事を探さなけ
ればならなくなるのでしょうね。(どうする、オイ?)


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◆スロービジネスのすすめ

最近流行っているもの。スローフードにスローライフ。その延長でスロービ
ジネスはどうだろうか。

いわゆる小商いで生活する。国際都市で最先端のビジネスにチャレンジする
のではなく、地方都市や東南アジアでゆるいビジネスをする。ゆるいビジネ
スと言っても馬鹿にしたものではない。言い方を換えれば、ニッチ市場戦略
ということにもなる。

そもそも競争の激しいビジネスは、競合相手が多いから競争が厳しいのであ
る。皆が目をつけるビジネスだからギラギラしている。いかにも儲かりそう
であり、参入したくなるのだ。しかし、あまり儲かりそうもないゆるいビジ
ネスには誰も参入する気にならないだろう。しかし、競争の少ないオンリー
ワンのビジネスならば利益も期待できる。

様々な産地の人と関わってきたが、彼らに東京の厳しいビジネスを持ち込む
ことが本当に良いことなのだろうか、という疑問を感じている。産地の人の
多くはビシネスマンではない。地道に一つの仕事をやり続けてきた人たちな
のだ。彼らの仕事を東京のサラリーマンに要求してもできないように、東京
のサラリーマンがやるような仕事を彼らに要求してもできないのではないだ
ろうか。

ビジネスをゲームと考えること。アメリカでは当たり前だ。ゲームだから参
加するのも自由だし、脱退するのも自由。アメリカ人の中には、数年間ファ
イナンスの仕事に専念し、大金を手にした後にあっさりと職を捨てる人がい
る。ボランティアの仕事や大学に戻るのだ。ファイナンスの仕事はハイリス
ク・ハイリターンだがやはりストレスも半端じゃない。一生続けるような仕
事ではないと思うのだろう。若い時に集中し、ビジネスというゲームを楽し
み、その後は人間らしい生活を送るという考え方だ。

日本人は仕事を生きがいと考える人が多い。だから、儲からなくなっても簡
単には辞めないし、辞めることは自分の存在意義を否定することにつながっ
てしまう。リストラされた人が自殺してしまうのは、こうした仕事観がある
からだろう。

一生続けるという前提で仕事を選ぶのであれば、あまり厳しい仕事は無理だ。
飽きずに、コツコツと続けられる仕事が良い。しかし、国際競争、市場原理
の導入により、仕事はビジネスになり、競争の社会になってしまった。専門
知識や専門のノウハウがなければ生き残れない世界である。「コツコツと続
けたい」という意見は、「甘い」の一言で否定されてしまうだろう。

そこで、「スロービジネス」という発想が生まれてくる。多くの利益を望ま
ない、生活をベースにした継続できる仕事。株式会社の思想ではなく、家業
の思想。利益のためではなく、生活を維持するための仕事。毎日、なんとか
暮らせればいいじゃない。競争に打ち勝つのではなく、競争からは早めに降
りましょうよ、という精神である。

正直言って、日本、特に東京でファッションビジネスを展開するのは厳しい。
高い専門性、国際競争力が必要とされる。しかし、日本の地方や海外に行け
ば、もっとゆるい仕事が存在する。生活費が低いからそんなに高い利益率を
追求しなくてもいい。厳しい仕事をすれば幸せになれるという保証もないし、
その確率が高いわけでもない。むしろ、消耗する人が多いのではないか。も
っと豊かな人生の設計があるのではないか。横並びではなく、オンリーワン
の人生には競争では得られない喜びがあるような気がするのだが。
執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任