231,「産地の自立」と「若者の自立」

04/05/14

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
 
産地と若者。どちらも自立していない。双方の存在を活かすには第三者が必
要ではないのか、という意見です。これまでの日本の繊維産業の活性化政策
の多くは保護政策であり、ビジネスを活性化させるよりも、あまりにも直接
的な当事者への補助ではなかったでしょうか。それでもありがたい話なので
すが、どうも補助すればするほど、その産業は衰退していくような気がして
います。

産地も若者ももっとビジネスの重要性を理解し、少なくとも、ビジネスを蔑
視しないことが大切だと思います。


===================================

◆「産地の自立」と「若者の自立」

産地に欠けているのは企画機能と販売機能。一言でいえばビジネスを組み立
てる機能が欠如している。特定の技術はあるのだが、常に他者のビジネスに
依存している。役割分担ということで考えれば悪いことではない。むしろ、
ビジネスを考えない優秀な下請業者の存在が、大企業を支えてきた。しかし、
下請業者に仕事を出していた大企業は中国に生産を移転してしまった。国内
産地が国際化の波に取り残された原因は、内外のコスト格差とされるが、そ
れ以前にビジネスを他者に依存していたことも大きな原因と考えていい。自
社でビジネスを組み立てられれば、自らが中国生産を活用するビジネスに参
入し、国内生産との棲み分けを考えていたと思われる。

産地の製造業者は、国内空洞化の責任がアパレル、商社、流通企業にあると
考えている人が多いようだが、彼らに商品供給している企業のほとんどが日
本の合弁企業であることを見逃してはならない。もし、産地企業が自立して
いれば、合弁企業の多くは日本の製造業者との合弁であったはずである。し
かし、多くの製造業者はその意志もなく、資本調達や海外での労務管理や生
産管理の能力を持っていなかった。その結果が現在の空洞化である。

ファッションビジネスを目指す若年失業者の問題も産地の問題と似ている。
これまでの専門教育では、起業についてほとんど教えていない。選択肢は就
職だけであり、企業内教育を前提とした基礎教育しか行われてこなかった。
企業に依存したモノ作りという意味では、産地と共通している。依存してい
る企業への就職がなくなった途端に、自分の進路を見失ってしまったのであ
る。産地の下請業者が元請けから仕事がこなくなった途端に将来を見失った
ことと似ているではないか。

ファッション専門学校を卒業し、ファッションビジネスを目指す若者達の多
くは、ビジネスを組み立てられない。生地を買って、デザイン、パターンメ
ーキング、縫製を行って一点ものの商品を作ることはできるが、ビジネスに
つなげる方法が分からない。

学生の時に作る作品の多くは自己表現のためのアートとしての服づくりであ
り、ビジネスとしての服づくりではない。社会にでれば否応なく売れる商品
作りをするのだから、学生の時ぐらい自由な服づくりをしても良い、という
意見もあるが、それは就職率が高かった時代の話だろう。就職できない人の
方が多くなった現在では、企業に依存せずに、自立する方法を教えなければ
ならないのではないか。

自立していない産地と自立していない学生のコラボレーションが流行ってい
る。当然、できあがる商品はビジネスを前提としたものではない。デザイン
コンテストを行っても、多くは補助金事業であり、イベントそのものを消化
させればいい、という発想である。本当に必要なのは、学生のデザイン力や
センスと産地の持つ生産機能を組み合わせ、ビジネスとして成立させる能力
である。そこには当然、資金調達も含まれる。

産地の製造業者に対する自立支援事業は存在するが、若年失業者に対する自
立支援事業はほとんどない。既存の製造業者を支援するよりも、ヒジネスを
組み立てる機能を持つ企業を支援することが、産地も若年失業者も活かすこ
とにはなるだろう。国内製造業者を支援するには、国内製造業の機能を活か
したビジネスを創造しなければならないからだ。そういうビジネスモデルそ
のものを支援することはできないのだろうか。

執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任