230,「形の服」と「色柄の服」 04/05/07
みなさん、こんにちは。坂口昌章です。 =================================== ◆「形の服」と「色柄の服」 服には二つの種類がある。一つは形の服。もう一つは色柄の服。 洋服は基本的に形(シルエット)の服だ。生地は無地が基本であり、シルエ ットを表現するための生地は風合いが重要になる。同じ型紙を使っても、固 い生地、柔らかい生地、張りのある生地、ドレープ性のある生地では、全く 違ったシルエットになる。風合いに対する追求が激しい反面、色柄に対する こだわりは弱い。洋服の生地の柄を見ても、それほど大きな柄はない。大き な柄のドレスがあるとすれば、それはきものや民族衣装の影響を受けている と考えても良いかもしれない。サテンの光沢やベルベットの光沢はシルエッ トによって美しく陰影をつける。そういった生地の表面効果に対しても非常 に気を使う。 「形の服」のデザインとは、シルエットを創り出すことに他ならない。布を 裁断し、それを縫い合わせることにより、ギャザーやタックを取ることによ り、あるいはアイロンの操作で布目を変形させることにより、立体を表現す る。立体を表現するためのテクニックを学ぶことが洋服の基本である。 一方、日本のきものは色柄(グラフィック)の服だ。基本的には決まった幅 の織物を使い、シルエットもほぼ決まっている。体型やサイズの差があって も、着付けでカバーすることが可能であり、カバー率は高い。きもののデザ インとは、まさに色柄のデザインであり、グラフィックデザインである。グ ラフィックデザインを布に描く技術が友禅であり、織の段階で色柄を変化さ せる技術が紋織や綴れ織であり、糸の段階で染色して色柄の変化を表現する のが絣である。 そのほかにも、様々な絞り染や刺繍を組み合わせることにより、複雑な色柄 の世界を表現する。色柄に対しては、非常なこだわりを持っているが、生地 の風合いについては、洋服ほどのこだわりはない。基本的には糸の密度や撚 りも一定の基準の中で収まっている。洋服のように、風になびくシフォンや どっしりとしたサテン、ツイードやデニムといったバリエーションは見られ ない。きものの生地は薄地であり、寒ければ重ね着をする。究極の重ね着が 十二単だ。 洋服の分野にも色柄の服はある。Tシャツやアロハシャツだ。もっともアロ ハシャツはきものの古着をほどいて作ったことに由来しており、きものファ ブリック、和布や古布を使った服の元祖ともいえるだろう。 洋服のデザインを学ぶものは、基本的にシルエットからアプローチする。特 に日本人のように色柄の服に馴染んだ人間にとっては、シルエットという概 念、立体に対するセンスが弱い。弱い部分をしっかりとカバーしなければ洋 服が理解できないからだ。一方で、世界の民族衣装を見ると、色柄の服が多 いことが分かる。シルエットは固定され、色柄の変化こそ、服のデザインと 考えられるジャンルである。 ファッション専門学校の学生が、シルエットでも色柄でもなく、その中間的 なデコラティブなデザインを好むのは、洋裁という技法を使いながら、実際 には色柄の変化を追求している姿と捉えることもできる。西欧人から見れば センスの悪い服かもしれないが、ある意味で、この種の服は日本オリジナル といえるのかもしれない。そういう系譜をたどれば、原宿や渋谷から生まれ る不可解なファッションは形と色柄の狭間に咲いた花ともいえそうである。 日本人のアイデンティティを考える上でも、再度、色柄の服について考えて みる必要があるのではないだろうか。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) ( http://j-fashion.cocolog-nifty.com/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 |
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