229,コンプライアンスと日本製品奨励策

04/04/16

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。

コンプライアンスという言葉をご存じでしょうか。欧米では次第に当たり前
になっている考え方です。日本で問題になっているM自動車、A農場等はコ
ンプライアンスに対応していない典型的な事例であり、あのような状態に陥
らないように企業はコンプライアンスに取り組んでいるわけです。

日本ではイオンが積極的にコンプライアンスに取り組んでおり、PB商品の
サプライヤー企業に対し「サプライヤー取引行動規範」を導入しています。
国際的な第三者機関に認証を委託し、海外の工場に対しても調査に行ってい
るそうです。

日本の繊維業界も輸出振興が積極的に展開されているようですが、結局展示
会への出展だけであり、コンプライアンスには取り組んでいません。

私が心配なのは、日本が何もしないうちに、中国企業が積極的に国際的な認
証を取得しているという事実です。それでいいのでしょうか?


===================================

◆コンプライアンスと日本製品奨励策

コンプライアンスとは、一般的に「法令遵守」と訳される。企業が存在する
現地の法律を遵守することが基本だが、その他にも、「環境汚染」「児童労
働等の人権問題」「工場の安全・衛生管理の欠如」等の反社会的な行為を行
わないことが含まれる。こうした課題に対して、企業が積極的に取組むだけ
ではなく、下請業者や仕入れ業者等を含むサプライチェーン全体で管理して
いこうという動きが欧米を中心に広がっている。

その大きな理由は、企業の反社会的行為がマスコミに報道され、消費者の不
買運動等に結びつくケースが増えていることである。また、ヨーロッパでは、
製品の製造者責任だけでなく、「小売店で販売している商品は小売店が責任
を持たなければならない」という法的な圧力も強まっている。企業はリスク
管理という面でもコンプライアンスに取り組まなければならなくなっている
のである。

現在、日本の繊維製造業は空洞化が進み、日本製品の一定シェア確保を維持
するべく様々な施策がなされている。しかし残念ながら、ほとんどは製造業
側、産業側の視点であり、消費者の視点が見られない。

消費者は既に日本製品でも中国製品でも意識しなくなっている。それだけ、
中国生産の品質レベルが向上しているのであり、それは日本人による技術指
導に負うところが大きい。量販店や専門店でも生産国を意識することはほと
んどない。商社はそういうビジネスを推進している立場であり、適地適品こ
そがグローバルソーシングであると考えている。国内生産にこだわっている
のは行政と産地だけと言ってもいいかもしれない。

消費者が国内生産に積極的な共感を示さないのは消費者視点が欠如している
からである。例えば、ヨーロッパ基準に合格するようなコンプライアンスの
企業認証を全ての国内製造業が取得したとする。コンプライアンスの企業認
証を受けている企業は、環境問題に配慮し、人権に配慮し、法律を遵守し、
社会的責任を果たしていると消費者に伝えられる。同じ商品を購入するのな
らば、そういう企業から購入するべきだ、という主張は十分に説得力を持つ
だろう。

輸出振興についても同様のことが言える。欧米への輸出を考えるのならば、
単に価格や品質だけでなく、コンプライアンスが重要な条件になる。

コンプライアンスの認証を受けることは、企業の品質管理、生産管理、環境
問題への配慮、労務管理の問題を総合的に見直すことであり、それらの業務
のシステム化やマニュアル化を進めることにもつながる。自社の利益だけを
考え「困った、困った」と言っても、消費者の支持を勝ち取ることはできな
いのだ。残念ながら、日本の製造業者の多くはこうした社会的な意識が希薄
である。

アパレル企業は自社の商品が中国のどのような向上で生産されているのか。
そこの環境対策はどうなっているのか。児童労働はないのか。賃金や労働時
間は適正なのか・・・等々を把握しているだろうか。「生産管理は商社に委
託しているから関係ない」という言い訳は通用しない。アメリカの多くの企
業が摘発を受けているのは、直接発注した相手ではない。間接的に自社製品
を生産している下請け、孫請け業者である。それでも、アジアの片隅で児童
労働を強制している工場は摘発され、そのブランド企業の製品が不買運動に
あっているのである。商社への丸投げという形態は、コンプライアンスの面
でも見直しが必要だろう。

執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任