222,原価率から小売価格を設定してはいけない

04/02/27

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
 
最近、価格決定システムについて考えています。アパレル業界では、当たり
前のように原価率から小売価格を換算していますが、これは正しいのでしょ
うか。原価率に忠実だと、小売価格を下げるためには原価を下げなければな
らず、結果的に質の悪い商品が横行することになります。また、製造メーカ
ーは採算割れを余儀なくされ、淘汰が進んでいきます。

この論理の中には、「安くすれば売れる」という価格に対する絶対的な信仰
が存在します。企業の論理では、安い商品を大量に販売するのも、高い商品
を少量販売するのと何ら変わりはありませんが、顧客にとっては全く違うこ
とです。高くても良い商品が欲しいという顧客満足は無視されているのです。

信頼できる小売店と原価を明かさず、掛け率だけを決定しておき、小売店に
価格を決定してもらうビジネスはいかがでしょうか。高く売れれば双方がハ
ッピーになります。

価格決定権をポンと顧客に投げたのが、オークションです。そんなことを考
えても良いのでは・・・。


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◆原価率から小売価格を設定してはいけない

「薄利多売」とは、利益は少ない商品を数多く売るというコンセプトである。
小売価格を半額にして、数量が二倍以上売れれば売上は同じだ。しかし、高
額商品よりも薄利の場合、二倍では追いつかない。例えば、5千円で仕入れ
て1万円で売る。粗利率は5割だ。この商品を10枚売れば、売上10万円
で粗利は5万円。一方、3千5百円で仕入れて5千円で売る。粗利3割のこ
の商品を20枚売れば、売上は10万円だが、粗利は3万円。34枚販売し
て(売上は17万円)ようやく粗利が5万1千円となる。

ユニクロ等のモデルは「薄利多売」ではなく、「低価格多売」である。中国
生産のため利益率は高い。同じ利益率と考えて、5千円で仕入れ1万円で販
売する商品を10枚売るのと、千円で仕入れて2千円で売る商品を50枚売
るのと比較するとどうだろうか。まず、同じような商品の場合、価格を5分
の1にしたから、5倍の数量が売れるかを見極めなければならない。単価の
低い分だけ数量がかさむので、店頭スペースも物流もコストがかかる。した
がって、ここでも実際には5倍以上の数量を販売しなければならないだろう。
セルフ販売でなければ、販売員のコストもかかるはずだ。

しかし、ユニクロブームの時には、安い商品を買うのが面白かった。上から
下まででこんなに安いんだよ、というのが自慢になっていたのだ。だから、
必要のない商品まで買った。必要ない服を売るということでは、ブランド商
品と同じである。

欧米のブランド商品は「厚利少売」「高価格少売」というモデルだ。日本の
ようにブランドブームの市場は、「厚利多売」「高価格多売」である。こち
らは、高い商品を持っているのが自慢になっている。結論からいうと、ファ
ッション商品のブームとは「その商品を持っていることが自慢になる」状態
である。

ここでまた冷静に考えてみたい。現在の市場で持っていて自慢になる服とは
どんな服か。安い服か。高い服か。変わった服か。オーソドックスな服か。
価格は安いのが良いのか、高いのが良いのか。

最近、店頭を見ていると、ブランドによって価格帯が異なっているのであり、
商品の質はあまり関係ないようだ。無印良品やユニクロは価格に比べれば商
品の質は高い。しかし、全く同じような製品が他のショップでは3〜4倍の
価格で好調に売れている。

最早、商品の質と原価は関係ない。同じ製品でも、国内で作れば高くなるし、
中国で作れば安くなる。また、直接仕入れれば安くなるし、流通段階で何社
かを経由すれば高くなる。原価とは、その企業が置かれているポジションに
よって変わるものであり、絶対的な基準にはならないのである。それなのに、
アパレル企業の多くは原価率を定め、原価から小売価格を弾き出している。
本来、価格とは需要と供給のバランスで決定するのであり、原価ではなく市
場で決定されるべきものである。消費者が高く買ってもいいという商品は高
く売り、安くないと買わないという商品は安く売る。その意味でも、メーカ
ーが小売価格を決定するのはおかしい。小売価格は小売店、最終的には顧客
が決定すべきである。

この価格決定システムが崩壊したところから、日本のファッション市場は歪
んできたのではないだろうか。原価は変わらなくても、クリエイティブな商
品には高い価格を付けるべきなのだ。現在、日本国内のクリエイティブな能
力と高い生産技術が失われつつある。これは原価率という単純な物差しで価
格決定している弊害と言えるだろう。

執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任