220,勇気ある価格設定と顧客満足の両立

04/02/13

みなさん、こんにちは。坂口昌章です。
 
最近、高い商品が気になってしかたがありません。私なぞは、素材から生産
の部分が分かっているために、原価が分かってしまいます。「よく、こんな
商品をこんなに高く売るなぁ」と本気で感心してしまいます。昔はそういう
商品を見ると軽蔑したものでしたが、今は尊敬の目で見ています。

小売価格というものは、顧客がその商品を購入するからこそ存在しているの
です。誰も買わなければ、小売価格は下がっていくはずです。あるいは、そ
のブランドが市場から消えているはずです。それが堂々と高い価格の商品を
販売しているということは、顧客が支持していることを証明しているのです。

メーカーの人は、「こんな商品、うちでも作れる」と言いますが、それでは、
こんな商品をこんな値段で売れる自信はをあるのでしょうか。自社の製品を
高く販売するノウハウはあるのでしょうか。問題は作ることより、売ること
です。当然、そちらのノウハウの方がお金になるのです。


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◆勇気ある価格設定と顧客満足の両立             

どうも我々の頭の中には「商売の基本は薄利多売」という言葉が刷り込まれ
ているようでならない。一億総中流という横並びの巨大市場が存在していれ
ば、薄利多売こそ商売の王道といえただろう。しかし、現在のように、高額
なブランド商品と廉価な実用商品が二極化している状況では薄利多売こそ正
解と言い切れるのだろうか。

そもそも価格に正解はない。20年前、一般的なカシミヤのセーターは4万
円前後だった。それが10〜30%の価格に下落している。カシミヤの品質
も価値も変わらないが、価格が下がってしまったのだ。呉服業界では有名な
話だが、中国産の「明綴れの帯」が当初80万円で販売され、最終的には8
万円でも売れなくなった。

こうした話を聞くと、当初の価格設定が暴利を貪った悪い価格であり、値崩
れした価格が安くて良い価格だと考えがちだが、本当にそうだろうか。高額
品マーケットとは、商品の原価が問題なのではなく、顧客満足が問題なのだ。
80万円の帯を満足してかった顧客は喜んでいたはずだ。しかし、その後で
同じ商品を8万円で販売したから顧客の満足度は消滅してしまったのである。

ブランド商品の原価率は低い。一流ブランドでも高い生地を使っているとは
限らない。粗利益率は高いが、その分、広告宣伝や店舗デザイン、ファッシ
ョンショー等のプロモーションに投資し、ブランド価値を高めているのであ
る。また、彼らは呉服業界のように顧客を裏切るようなバーゲンセールを行
わない。顧客は安い原価の商品を高く売り付けられているかもしれないが、
その時味わった満足感は裏切られることがないのだ。

香港ファッションウイークに出展していたニッターは、使用している糸が全
てイタリア製。ホールガーメントかと思わせるような高度なテクニックを手
動機で生産している。原価は20〜50ドルとのことだったが、ヨーロッパ
のメーカーは10倍で販売しているという。20ドルなら2万円で販売して
いるのだ。おそらく、日本なら20ドルを18ドルに値切り、7900円で
売ろうとするだろう。両社を比較して、どちらが高度なビジネスモデルと言
えるだろうか。

しかも、下手をすると日本の業者は値切った上にオーダー数も少なく納期が
早いのが現実だ。相手のメーカーにしてみれば、どちらの業者と付き合って
いきたいだろうか。どちらの業者と信頼関係を築けるだろうか。

ファッションビジネスの基本とは、「顧客に喜ばれる商品を、いかに原価を
押さえ、高額で販売するか」ではないだろうか。しかも、顧客満足を裏切る
ようなバーゲンセールや、前倒しで商品を購入した顧客を失望させるような
追加生産をいかに行わないか、という条件がつく。

呉服問屋の罪は、小売価格を高く設定したことではない。同じ商品の価格を
勝手に付け替えるという顧客を裏切る行為を行ってきたことである。また、
高い粗利を顧客満足のためのプロモーションに使ったり、技術開発やデザイ
ン開発に投資するのではなく、自らの経費として食いつぶしたことである。

呉服の価格設定は、今後のアパレル業界にとっては非常に参考になる。顧客
に満足を与える高額商品を企画販売することが、今後のファッションビジネ
スの課題になるはずだ。これは国内市場ばかりでなく、欧米市場や中国市場
にも通用するはずである。