213,ロシア人向けファッションビジネス講座最終回 03/12/26
こんにちは、坂口昌章です。 ◆7.取引、貿易の基本 商取引の基本は、安く仕入れて高く売ること。 生産者は大量に生産し、消費者は一つずつ消費する。また、生産者はそれぞ れの地域で固まってるが、消費者は広く全国に分散している。そのため、大 量生産された商品を消費者に伝えるまでにいくつかの段階を経ることになり、 それぞれの段階の経費が上乗せされていく。なるべく生産者の近くで大量に 仕入れ、それを消費者に販売することが商業の基本になる。 20世紀には、大量生産大量販売、大量消費が一つの大きな流れだった。大 量生産した商品を大量販売するには、標準化された多店舗展開が必要になる。 チェーンストアがそれだ。加えて、販売経費を削減するためにセルフ販売が 考案された。消費者が自ら商品をピックアップし、集中レジで決済を行う。 それにより、販売経費を低く押さえる狙いである。 しかし、大量生産による価格下落よりも、供給過剰よる剰余品の販売の方が より安く販売できるようになると、チェーンストアは競争力を失っていった。 そして、余剰品の販売を業態としたファクトリーアウトレットやディスカウ ントストアが台頭してきたのである。 また、中国のような低コストの工業生産国が誕生すると、中国から仕入れて 安く販売するという業態も誕生した。 より安く仕入れて、より安く売るという業態とは正反対なのが、ファッショ ンビジネスである。いかに高く売るか。いかに付加価値を消費者に納得させ るか。商品の実利的価値だけでなく、いかに情報価値を上乗せするか。それ がポイントなのだ。 大理石張りにシャンデリアという高級なインテリアは、商品そのものに何の 影響ももたらさない。しかし、高級な環境で商品を販売することで、その商 品に見えない価値を与えているのである。 また、商品の価値は絶対的なものではなく、相対的なものである。周囲によ り安い商品が山積みされていれば「高い」と言われる商品でも、周囲により 高い商品が販売されていれば「安い」と言われる。即ち、価格は原価だけで 限定するのではなく、販売環境によって大きく左右される。 また、需要と供給のバランスという意味では、「希少価値」も見逃せない。 例えば、日本ではありふれた商品でも、ロシアにはない商品であれば、高い 価格で取り引きされるはずだ。 貿易の基本は、地理的な条件により、需要と供給のバランスが異なっている ことを理由し、供給の多い地域から需要の多い地域に商品を運び、より高く 販売することである。 中国で生産された商品がロシアで高く販売できるのであれば、それを輸入販 売することで利益を得られる。 ただし、貿易には様々なルールがある。関税や付加価値税、運送賃や保険料 を理解していなければ、最終的に割高となり、売れなくなることも想定され る。また、FTAなどの自由貿易体制についても考えなければならない。関 税のある国から輸入するよりも、関税のない国から輸入した方が有利である ことは言うまでもない。場合によっては、FTAを結んでいる国を経由して 輸出した方が有利な場合もある。 貿易や取り引きには、需要と供給のバランス、税制の問題や輸出入に関わる 様々なコストについても理解が欠かせないのである。 ◆8.インターネットを活用した日本との連携 ロシアは市場経済に参入してからの歴史が浅いために、ビジネスに必要なノ ウハウが不足している。そのノウハウを補うために、アジアの経済成長のト ップランナーだった日本(最近は中国の経済成長が著しいが、ノウハウの蓄 積という意味では日本の方が有利だろう)のノウハウ導入することは有効で ある。インターネットを活用することにより、遠隔地からのノウハウの伝達 も可能になっており、互いの信頼関係さえ保てれば様々なビジネスチャンス が存在する。 アパレル製品を中国から輸入する場合でも、日本人が品質管理や納期管理を 行うことで安定したビジネスが可能である。ファッションデザインやパター ンメーキングの分野でも、日本には優れた人材やCAD等のシステムが存在 する。建築デザイン、ショップデザイン、インテリアデザイン等の分野でも、 インターネットを通じて、ロシアにノウハウを伝達することができるだろう。 インターネットでPOSデータを日本に転送し、仕入れ、販売、在庫等を日 本で分析し、小売店の経営に対して直接的なアドバイスを行うことも可能だ。 また、ロシアでの起業の前に日本の同業者の元で研修を行い、ある程度のノ ウハウを吸収してから、ロシアで起業するというスタイルも検討すべきであ る。 いずれにせよ、インターネットを活用することで、様々なノウハウの提供、 業務のアウトソーシングが可能になることは間違いない。そのための日本企 業や日本のコンサルタント、専門家とのマッチングが必要であれば、それも 一つのビジネスとなるだろう。 どんなにロシアにビジネスチャンスが多いと言っても、日本人が直接参入し てうまくいくかは疑問である。それぞれの国には固有の生活スタイルや生活 習慣が存在するのであり、卸売や小売りの分野ではドメスティックな人が役 割を担うべきである。日本とロシアが協力することでビジネスが成立するの であれば、それは双方にメリットがあると言えよう。そのための第一歩をど のように踏み出すかは、皆さんと一緒に考えたい。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 |
|
|