209,クリエイティブな仕事の流通改革 03/11/28
こんにちは、坂口昌章です。 ◆クリエイティブな仕事の流通改革 クリエイティブな仕事を目指す若者は数多い。一方で、クリエイティブな仕 事から足を洗う人も多い。クリエイティブな仕事に対する評価が低く、報酬 が少ないためである。ソフトが大切だということは分かっていても、ソフト にお金を支払うということは別だという人が多いのだ。 そもそも何がクリエイティブな仕事なのだろうか。アパレル企業の中には、 商社や企画会社が提案してくる商品を選ぶだけというデザイナーも増えてき た。これがデザイナーの仕事と言えるのだろうか。それでは提案する企画会 社のデザイナーがクリエイティブなのか。売れ筋情報を入手し、後を追いか けるだけであり、担当者も自分がクリエイティブな仕事をしているという自 覚はないだろう。 ショップデザイナーやグラフィックデザイナーの話を聞いても、クリエイテ ィブな能力を求める仕事自体が減っているし、報酬の相場も下落していると いう。自分たちが若い時には、大きな仕事を任せられ、失敗を繰り返しなが らも成長することができた。今の若者は、仕事のチャンスそのものがない。 チマチマとした細かい仕事ばかりだ。 更に問題なのは、企業組織内ではクリエイティブな能力を磨くことは困難で あるにも関わらず、大企業は大企業に仕事を依頼したがるということだ。そ の結果、クリエイティブな仕事をする個人は、大手広告代理店などの下請け にならざるを得ない。また、クリエイティブな仕事を正当に評価する能力が ないために、実力ではなくコネクションで仕事が決まっていくのだ。 中国という世界の工場が台頭し、日本は企画機能やブランド開発機能を担う 必要性に迫られている。しかし、肝心のクリエイティブな機能は枯れていく 一方だ。 クリエイティブな才能を伸ばし、クリエイティブな仕事に対する適正な報酬 システムを確立するには、クリエイティブな仕事の流通システムにメスを入 れなければならない。無駄な中間流通を排除し、よりダイレクトな流通シス テムを作るのである。 この話は、繊維業界の課題である「製造業者の自立」に共通している。クリ エイティブな職業の個人もある意味では職人であり、営業や販売が苦手なこ とが多い。メーカーが問屋に依存するように、クリエイターは代理店に依存 してしまうのである。 メーカーがダイレクト販売を目指し、インターネットを活用するのであれば、 クリエイターも同様に、インターネットを活用したプレゼンテーションと受 注システムを開発するべきである。また、メーカーがレップや販売エージェ ントの活用を目指すように、クリエイティブな仕事を受注するためのレップ やエージェントという職種を開発することも必要だろう。メーカーが輸出を 目指すのであれば、クリエイターもまた海外市場に目を向けなければならな い。クリエイターが共同でショップを開発するという試みも魅力的だ。 現在のファッション業界は安物ばかりを追いかけ、結果的に国内製造業の空 洞化を招いた。同様に、国内クリエイターの空洞化も招いている。クリエイ ターは趣味で仕事をしているわけではない。「好きなことをしているのだか ら報酬が低くても我慢しろ」というのは通らない理屈である。クリエイター 及びクリエイティブな仕事の流通問題は、日本のファッション業界の重要な 課題である。日本の優秀なクリエイターの海外流失は既に始まっているのか もしれない。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 |
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