206,ハルビンでビンビンVMD

03/11/07

こんにちは、坂口昌章です。

中国、黒龍江省の省都、ハルビンに行ってきました。日本からは新潟から直
行便で2時間30分程度です。その出張報告をします。
長文です。覚悟するように。


◆ハルビンでビンビンVMD

ハルビンの百貨店に勤めている日本人がいる。その情報が届いたのは9月だ
った。流通業界の満蒙開拓団か?その日本人M氏は元百貨店マン。海外店で
の経験と流暢な中国語の能力を買われ、中国資本の百貨店にヘッドハンティ
ングされた。実質的な現場の責任者である。M氏は40歳代半ばだが、百貨
店では最も年長者である。総経理も彼より若い。スタッフはみな若く、やる
気マンマン。

ハルビンの百貨店は建物は立派で内装も綺麗だ。日本の一般的な地方百貨店
よりはレベルが上だろう。しかし、器は立派でも自ら店を演出する能力がな
い。日本なら専門業者に委託すればいいが、ハルビンには業者そのものがい
ない。レンタルのマネキン、什器もない。VMDの専門家も存在しないのだ。
困ったM氏がたどり着いたのが日本の「アパレルウェブ」だった。「ハルビ
ンの百貨店に来て、VMDセミナー研修をやってくれる人はいるだろうか」
という問い合わせである。そして、「坂口さん。面白い話が来たよ。ハルビ
ンに行かない?」という話になった。

タイミングとは恐ろしいもので、その話の1カ月ほど前、VMDの仕事をし
たいという30歳代の男性F氏が弊社を訪ねてきた。彼は、SPAアパレル
で販売員からスタート。みっちりVMDを勉強して、販売と企画をつなぐ役
割を担う。その後、お兄さんが経営している食品スーパーを手伝うことにな
ったが、スーパーが軌道に乗ったため、再びVMDの仕事をしたいとのこと。
私はF氏にVMDのコンサルティングのメニュー、VMD教育プログラムの
メニューを宿題に出した。1週間後、企画書が送られてきた。理論的にもし
っかりしており、現場の経験も豊富そうだったので推薦状を書いて彼に送っ
た。

ハルビン行きの話を聞いて、私はすぐにF氏を思い出した。さっそく「一緒
にハルビンに行かないか?」と連絡を取る。日程の調整、報酬の調整、教材
資料の作成、翻訳や通訳の手配依頼、契約等々の作業が進み、10月末に二
人で出張ということになった。

日曜日の夕方、ハルビン空港に到着。M氏にピックアップしてもらい、空港
からまっすぐ市内へ。ホテルで荷物を下ろしたら、そのまま競合百貨店5店
舗のリサーチに出かける。途中で、M氏の部下と合流。夕食を取りながらス
ケジュールの確認をする。四川料理は辛いというより痛い。唐辛子で口の中
は焼け、山椒で口の回りが麻痺する。

月曜日は9時30分ホテルピックアップでE百貨店へ。担当者との顔合わせ
の後、すぐに店内のリサーチ。地下の食品から売場を上がりながらVMD上
の問題点を指摘しまくる。担当者は反論するが、我々はそれを理論で跳ね返
す。昼食後、セミナー会場のホテルに移動。経営幹部及び担当者との討議会。
私からは中国の百貨店が置かれている状況と問題点、日本の百貨店ビジネス
の経緯と現在の中国百貨店の比較等について話す。F氏からは、VMDとい
う概念の説明。VMDの意義などを解説する。

喧々諤々の質疑応答に引き続き、販売スタッフへのセミナー。中国語訳され
た資料をプロジェクターで写しながら、基本的なVMDの解説を行う。通訳
が専門用語を理解していないので、なかなか意味が伝わらない。それでも受
講生の目は輝いている。

セミナー終了後、総経理、M氏を含め、社員一同でレストランで歓迎レセプ
ション。またまた四川料理。赤唐辛子と青唐辛子、山椒、香草の山の中に料
理の具が隠れている。ビールで始まったが、結局、白酒(パイチュー。この
日は53度のマオタイ酒でした)のイッキ大会になだれ込む。お酒の飲めな
い人はなぜかヨーグルトを飲んでいる。

気がつけば、朝から働き通し。ホテルに戻ってベッドに倒れ込む。

火曜日は売場に9時集合。幹部、スタッフ総勢20名に囲まれながら、ビデ
オカメラ撮影担当、デジタルカメラ撮影担当を引き連れながら売場を巡回す
る。食品売場の細かい問題点を指摘していると、そろそろ実地演習の時間に。

1階のバッグショップからスタート。スタッフの外側には「何事か」と集め
る一般の顧客が覗き込む。黒山の人だかり。その人たちが少しずつ前に詰め
るので、F氏はつぶされそうになる。助手もいないまったくの孤軍奮闘で商
品のレイアウトを直す。約40分で完成。販売員に解説する時間もなく、2
階の紳士服のショップへ。

ここでも、同様の人だかりの中で作業を進める。約40分でタイムアップ。
さぁ、3階の婦人服ショップへ。ここは、商品企画そのものに問題があり。
売場の什器レイアウトにも問題がある。スタッフは慣れてきて、いろいろと
質問が飛ぶ。「とにかく、出来るまで待ってください。後で説明します。」

昼食を挟んで、次はカシミヤのセーター売場。中国北部に特有の売場である。
ここでは、商品バリエーションに関係なく、紳士、婦人、あらゆる商品が整
理されずに、全てハンガーかボディで陳列されている。商品バリエーション
を販売員に確認しながら品出し、畳み直していく。

実習が終了すると同時に、再びホテルのセミナー会場に車で移動。

一同、待ち構える中で、基本的な商品の畳み方やボディへの着せ方を実技指
導。やはり、実技指導は説得力がある。F氏の見事な手さばきに拍手が沸く。

その後、本日の実技演習の映像を元に解説を進めていく。日本での事例との
比較も交えながらの具体的な解説だ。途中質問を受けると、昨日とは比較に
ならないぐらい、高度な質問、良い質問が出てくる。スタッフは明らかに興
味を持っている。それまでは、ほとんど何も考えずに、商品を陳列していた
のだ。それが、商品のレイアウトや陳列にも理論があることが分かってきた
のである。この勢いで行けば、何年で日本のVMD水準に追いつくのだろう。

結局、この日もF氏は一日中働きづめ。翌日水曜日は帰国の日だが、飛行機
は8時出発。ホテルロビーに6時待ち合わせ。お土産を買う暇もない。

これまでは中国への技術指導というと製造業だけだったが、今後は流通、小
売りの段階における技術指導が始まるだろう。中国の大手アパレル企業も社
員教育には多大な関心を寄せている。中でも、店頭の販売員の教育、販売現
場での技術研修は売上に直結するだけに関心は高い。そして、引き続いて、
アパレルの商品MD、テキスタイルの商品MDに関する研修ニーズが高まる
のではないか。製造業の国際競争の次は、流通業の国際競争が始まる。そし
て、そこにもまた、ビジネスチャンスがある。

執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任