166,情報による需要喚起、情報による価値創造(ブランド価値) 2002/11/08
こんにちは。坂口昌章です。 ◆情報による需要喚起、情報による価値創造(ブランド価値) ファッションビジネスとは商品に情報を付加して、物理的価値以上の価値を 創造するビジネスである。ファッション商品とは、商品の物理的価値だけで なく、それを購入し所有することで、何らかの優越感や満足感を得たり、あ る種のコミュニティへの帰属意識を満足させる商品である。商品とはシンボ ルに過ぎず、その背景にファッションの本当の価値が潜んでいるのである。 そのファッションの価値を創造できないから、物理的商品のコスト競争に陥 ってしまうのだ。 その意味で、ファッション商品に原価率は意味がない。精神的満足感に原価 は関係ない。既に、現在の市場は紳士スーツが1万円で販売され、一方で5 〜6万円のTシャツ、10万円のスカーフが販売されている。安売り競争は、 いかに原材料のコストを押さえ、工賃を押さえるかで勝負が決まる。それで も、原価がゼロになることはなく、ギリギリの消耗戦が続けられる。しかし、 いかに付加価値を付けて、高く売るかという競争に限界はない。顧客が納得 する価格であれば良いのだ。 既に、物理的な原価で価格を決定する時代は終わっている。安売り競争も原 価を考えたものではなく、余剰在庫を安く買いたたいて、破格の価格で販売 する業態が生まれている。原価以下の商品が流通するという事実は、需給バ ランスが崩壊していることを表している。合理化による低価格ではなく、余 剰品の低価格なのだ。 情報価値をたっぷりと含んでいるファッション商品の販売は、需要の方が供 給よりも多い状態を保たなければならない。欲しいけど手に入らないという 状況を生み出して初めて、情報価値が認知されるのである。 大量生産した製品をいかに大量に流通させるか。いかに大量に消費させるか、 というチェーンストア的な発想は、実用衣料か工業製品としてのアパレル製 品のものである。日本のアパレル業界は、アメリカのアパレル業界のノウハ ウを導入することでスタートを切ったので、どうしてもアメリカ的な発想に 陥りがちだ。しかし、アメリカのアパレル業界は、アパレル製品を工業製品 と位置づけており、また、ファッションデザインも工業デザインの一環と捉 えている。従って、基本的にプロダクトアウトの姿勢を崩していない。 アメリカのデザイナーブランドは、大量生産した商品をいかに大量生産に見 せずに販売するか、というノウハウを持っている。大量に生産しても、商品 を購入する時には、「あなた一人のための商品」であることを訴求するので ある。 需要を生み出すのは情報である。供給は物理的な生産機能である。需要を常 に供給より多く保つということは、「情報の流通量>商品の流通量」の状態 を保つことに他ならない。 例えば、視聴率の高い番組に出演している有名な芸能人が着ている商品が限 定10枚だったら、需要の方がはるかに多いことになる。有名な芸能人が着 用している映像情報は何百万人の人に流通する。その商品が欲しいという人 も数万人の単位で出てくるかもしれない。その情報量と商品の供給量は比べ 物にならないのだ。 情報の流通量が少なくても、それよりも商品の供給量を常に低く保てばビジ ネスは成立する。午前中で売り切れるパン屋さんや和菓子屋さんは、情報量 が少ないが商品の供給量も少ない。それでも価格競争に巻き込まれることは ないのである。 これまでファッションビジネスのノウハウとは、「いかに商品を作るか」と いう製造業のノウハウと、「その商品をいかに販売するか」という小売業の ノウハウを指していた。しかし、重要なのは、商品そのものを扱うことより も、商品の情報を扱うノウハウなのである。 店舗の重要さは、店舗という装置が商品に高いイメージを付加することがで きることによる。商品を陳列するだけのスペースならば意味がない。店舗と いう舞台装置に、販売員という狂言回しがいて、顧客を主役に仕立て上げ、 感動と共感を与え、その代価として付加価値の高い商品を購入していただく のである。 そう考えると、ファッション商品とはアパレル製品だけではない。服飾雑貨 やアクセサリーは勿論、化粧品、香水、チョコレート、ワイン、シャンパン、 お茶、陶磁器、インテリア製品、ステーショナリー等、あらゆるジャンルの 商品が含まれるのである。商品そのもののジャンルではなく、売り方や付加 している情報価値の割合でファッション商品になると理解した方が良いだろ う。 ブランドとは、そうした情報価値を保証する保証書である。ブランドがつい ているから高いのではなく、商品に付加された情報価値を保証しているのだ。 日本でブランドが育ちづらいのは、業界内で日常的に情報価値を認めていな いからである。常に物理的価値でのみ評価する癖がついているために、デザ インや作り手の哲学に対して対価を支払うという習慣がない。海外でブラン ド価値が確定したものには価値を認めるが、無名のデザイナーの作品に価値 を見出すことはできないのだ。 しかし、生活者の方は確実に変化している。少し前に、カリスマという言葉 が流行したが、若者はカリスマが認める価値は、自分たちも認めたのである。 カリスマが格付け機関になったのであり、カリスマが良いと認めたものは高 くても買うという行動を起したのである。 カリスマが認めた価値観が定着すれば、ブランドになる。ブランドを確立す るきっかけには、カリスマ性が不可欠なのだ。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 **************************************************************** 【アパレルウェブ通信・アパレルウェブへのお問い合わせ】 発行:株式会社アパレルウェブ 東京都中央区日本橋小舟町13-10 儘田ビル5F Tel:03-5614-8542 Fax:5614-8541 magazine@apparel-web.com アパレルウェブ: http://www.apparel-web.com 日本繊維新聞: http://www.nissenmedia.co.jp **************************************************************** |
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