164,顧客とダイレクトなコミュニケーションを 2002/10/25
こんにちは。坂口昌章です。 ◆顧客とダイレクトなコミュニケーションを 情報化の進展により、あらゆる情報がダイレクトに入手できるようになった。 日本の繊維流通は複雑だと言われてきたが、複雑な流通システムが成立して いたのは、情報が複雑に分断されていたからに他ならない。問屋にとって最 も重要な企業秘密は、仕入れ先と得意先だった。それぞれの段階で仕入れ先 と得意先を秘密にしておくことで、流通秩序が守られたのである。 各段階で仕入れ先と得意先を秘密にするのは、そのサプライチェーンが運命 共同体を構成していたからである。互いに仕事が空かないように、需給を調 整し、互いの経営が成り立つような利益配分がなされていたのだ。 20年前には、縫製工場がアパレル企業に「仕事が空いてしまう」と文句を 言いに来ていた。アパレル企業も生産機能を確保するために、仕事が空かな いように備蓄の仕事を出していたのである。こういう関係が保たれていた時 代には、互いに秘密を守ることができた。 しかし、アパレル企業が生産管理を商社に依存するようになり、縫製工場の スペースを考えることはなくなった。仕事がある時にだけ、仕事を出せばい いのである。下請け工場の方も、仕事を切らさないようにするには、自ら仕 事を取らなければならない。自らの存在を情報公開し、広く仕事を取らない ことにはスペースが空いてしまうのである。こうなると、アパレル企業が競 合相手同士であっても関係ない。縫製工場は縫製工場の論理で動かなければ ならないからだ。 また、あらゆる段階で輸入品が増えてきたことも、運命共同体を崩壊させて いる。 かつては、国内の紡績で作った糸は、国内の織布メーカーが布に加工し、染 工場で染色されていた。どの工程がなくなっても、互いのビジネスは成立し ない。糸がなければ織布メーカーは困るし、織布メーカーがなくなれば、染 色の仕事もなくなる。勿論、染色ができなければ、紡績が糸を作っても製品 にはならない。 しかし、輸入糸があれば、国内の紡績がなくなっても織布メーカーは仕事が できる。国内の織布メーカーが布を作らなくても、海外から生機を輸入すれ ば、染工場は加工ができる。輸入品の存在は、このように運命共同体を崩壊 させていったのである。 現在でも、繊維産地は分業体制であり、どれから一つの工程がなくなっても 仕事ができない。しかし、アパレル企業や小売店は、製品を輸入することが できれば、国内の繊維産地が崩壊しても、取り敢えず商売は成立するのであ る。 更に極論すれば、消費者は海外から商品を個人輸入することで、国内の流通 業者さえ排除することができるのである。 このように、これまで秘密とされてきた仕入れ先情報、得意先情報も、それ を秘密にしておく理由がなくなっている。各工程の企業が、それぞれの存在 や情報を公開するようになったのである。 中間流通の情報が意味を持たなくなる一方で、最終消費者の情報はあらゆる 工程で重要な意味を持つようになっている。これまで、消費者情報は小売店 が把握するものであり、問屋やメーカーが必要とするものではなかった。し かし、今では、あらゆる工程のあらゆる業種が消費者情報を必要としている。 仮需ではなく、実需に対応したビジネスを志向しているのである。 需要が供給を上回っている状況下では、製造段階の情報が価値を持つ。どこ でどのような製品を作ればいいのか。そして、その製品をどのように調達す ればいいか、という情報である。しかし、供給過剰の時代には、どこで商品 を買ってくれるのか、という情報が価値を持つようになる。そして、最終的 に商品を購入するのは消費者であり、消費者の情報こそ最も価値が高いので ある。 ファッションビシネスにおいても、かつては紡績や合繊メーカーのトップの 発言が情報価値を持っていた。しかし、現在は店頭動向や消費者動向の情報 が価値を持っているのである。業界マスコミもこの点に着目しなければなら ない。ファッションビジネスにおいて、最もニーズの高い情報は、ファッシ ョン市場情報なのだ。 紡績も合繊メーカーも、産地の織布メーカーも染工場も、縫製メーカーもニ ッターも、アパレル企業も小売企業も、全ての企業は消費者情報を入手する 必要がある。そして、消費者を自らの顧客として囲い込まなければならない のである。 現在の段階では、商品そのものを見ても、全ての生産工程が情報公開されて いるわけではない。例えば、シャツを購入しても、どこの縫製メーカーで縫 製したのか、あるいは、どこで織布したのか、どこで糸染をしたのか、どこ で撚糸したのか、どこで紡績された糸を使っているのか、は分からない。し かし、欧米ではこれらの工程を情報公開しようという動きがある。それぞれ の工程で環境問題、人権問題に対応していることを証明しなければ、消費者 は安心して最終商品を購入できない、という考え方である。 こうなると、ますますあらゆる企業が消費者とダイレクトな情報コミュニケ ーションを取るようになるだろう。そのためのツールは整備されつつある。 インターネット、WEBサイト、様々なバーコードシステム、商品に埋め込 むことができる超小型のチップ等々である。 現在は、生産機能を押さえることがビジネスの基礎となっているが、今後は、 消費者、生活者のコミュニティを押さえることがビジネスの基礎になるだろ う。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 **************************************************************** 【アパレルウェブ通信・アパレルウェブへのお問い合わせ】 発行:株式会社アパレルウェブ 東京都中央区日本橋小舟町13-10 儘田ビル5F Tel:03-5614-8542 Fax:5614-8541 magazine@apparel-web.com アパレルウェブ: http://www.apparel-web.com 日本繊維新聞: http://www.nissenmedia.co.jp **************************************************************** |
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