162,大量生産大量消費型流通の崩壊 2002/10/04
皆さん、こんにちは。坂口昌章です。 ◆大量生産大量消費型流通の崩壊 日本のマイカルグループ、アメリカのKマートが破綻した。私は、これら一 連の出来事を一つの時代、大量生産大量消費時代の終焉と考えている。 むろん、世界中がそうだと言うわけではない。中国では、これから経済成長 が見込めるし、大衆消費社会が到来するだろう。その主役は、大量生産大量 消費型流通であると判断している人も多いだろう。また、日本でも量販店全 てが赤字に陥っている訳でもない。アメリカとて同様である。 しかし、それでも時代は変化していると思うのだ。その根拠の一つは、需給 バランスにある。大量生産大量消費時代とは、需要が供給よりも大きい状態 が前提になっている。だから、大量に生産しただけ大量に消費することがで きるのである。しかし、供給が需要より大きくなってしまえば、大量生産し た商品がだぶつき始める。こうなると大量生産大量消費時代とは言えない。 中国市場も含め、世界の市場とはそれほど大きくない。中国が繊維大国にな る以前、既に日本の合繊メーカーは供給過剰の状態に陥っており、その結果、 ポリエステルは貧しい人達が着る繊維というありがたくないイメージが定着 していた。その後、韓国、台湾、中国の合繊の生産高が伸びていったが、た ちまち市場は飽和状態になり、淘汰が始まっている。繊維産業とは最も成熟 した産業の一つであり、生産設備の効率追求も最も進んでいる。その最新鋭 の設備を、中国のような広くて人口の多い国が積極的に導入すれば、たちま ちのうちに供給過剰になってしまうのは当然だろう。 供給能力は投資さえすればいくらでも向上させることができる。しかし、需 要はそうではない。中国を例に取れば、中国の製造業が成長し、その結果、 従業員の給料が上がり、可処分所得が増えなければ消費に結びつかない。企 業が利益を吸収し、従業員への配分を少なくすればするほど、需給のバラン スは改善されずに、供給過剰が続くのである。 ファッションも同様である。生産能力を高めることか容易だが、消費者の生 活レベルを向上させ、ファッション感度を高めることは困難である。 確かに、テクノロジーの進歩は、中国をたちまちのうちにハイテク装備の最 新鋭工場に育て上げた。しかし、同時に、慢性的な供給過剰体制を築いてし まったのである。 慢性的な供給過剰は、ディスカウントストアやアウトレットストアといった 業態を生み出した。また、商品の価格が下落するというデフレ状況を生み出 した。また、製造業を不況業種に落とし、流通小売業のポジションを相対的 に押し上げている。 大量生産大量消費時代の流通は、標準化と多店舗展開、セルフサービスによ る低コストオペレーションを特徴にしていた。しかし、ディスカウントスト アは品揃えの標準化をすることは困難である。余った商品、割安な商品を仕 入れたら、それを値下げして売り切ることが必要であり、その意味では各店 舗の判断が優先される。つまり、標準化ではなく、個別の運営が必要になる のだ。 また、ディスカウントストアは、余っている商品を買いたたくことによる安 売りであり、店舗の標準化や多店舗展開、セルフサービスというシステムに よる安売りよりも強烈だ。需給のバランスにより、いくらでも安く仕入れ、 いくらでも安く売るのである。 安売りでは勝てないので、付加価値の高い商品を販売しようとすると、今度 は店舗の標準化、多店舗展開、セルフサービスというシステムが邪魔になる。 付加価値の高い商品は大量には販売できないし、また販売員による接客も必 要になるからだ。こうして、量販店、チェーンストアは衰退していった。 それでも、標準化、多店舗展開、セルフサービスという教えを盲目的に信じ 込み、そういう流通に対して商品を供給しているメーカーが存在する。この システムが成立するのは、供給よりも需要が多い商品だけを展開するしかな いだろう。ユニクロのフリースは、一時的に需要が供給を超えていた。従っ て、大量生産大量販売が成立した。また、携帯電話も普及する以前は、需要 が多く、供給が少なかった。しかし、それらの商品は普及率が上がり、市場 が飽和した段階で、主役はディスカンウトストアに取って代わられたのであ る。 中国は発展途上の市場である。日本人の感覚で言えば、まず大量生産大量消 費が始まり、安物を買い求め、平均的な需要を満足させてから、高級品へと 移行すると考えるだろう。しかし、中国市場はそうではない。発展途上であ るが、一部の大量生産商品は供給過剰状態に陥っており、値崩れが始まって いるのである。日本では一億総中流を実現した後に供給過剰時代に突入した が、中国は総中流になる前に既に階層化が進んでいる。従って、中国もまた、 ディスカウントストアと高級専門店の二極化に突入するのだ。 供給過剰な市場では、消費者に近いポジションが有利になる。顧客管理、顧 客の組織化をした企業が勝ち組になる。当然、小売店が有利だが、製造業者 であっても、WEBサイトやメールマガジン等を駆使することにより、顧客 を 組織化し、管理することが可能になる。全ての工程段階の企業が最終消費 者を目指して動く時代になるのだ。 その時に、求められる機能、ノウハウとは何だろう。少なくとも中国で安い 商品を作るノウハウではないはずである。また、安ければ売れるという思想 も間違いである。全ては需給バランスで考えなければならないのだ。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 **************************************************************** 【アパレルウェブ通信・アパレルウェブへのお問い合わせ】 発行:株式会社アパレルウェブ 東京都中央区日本橋小舟町13-10 儘田ビル5F Tel:03-5614-8542 Fax:5614-8541 magazine@apparel-web.com アパレルウェブ: http://www.apparel-web.com 日本繊維新聞: http://www.nissenmedia.co.jp **************************************************************** |
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