160,「生産の変化」より「流通の変化」への対応が優先 2002/09/20
皆さん、こんにちは。坂口昌章です。 ◆「生産の変化」より「流通の変化」への対応が優先 中国への生産基地移転が増え、中国からの輸入品が増えている。中国に行け ば、巨大な工場を実際に見ることができる。これは目に見えやすい変化だ。 同時に、流通システムや取引形態も変化している。いつのまにか問屋の淘汰 と集中化が進み、商社調達が増えている。その陰で、アパレルのデザイナー、 パターンメーカー、生産管理担当者のリストラが進み、一方で企画・生産管 理会社が増えている。中国生産が増えるに従い、商社マージンが増え、原価 率はますます下がっている。コストの引き下げと流通コストの増大が同時に 起きているのだ。こうした変化は見えにくい。 生産の変化と流通の変化。どちらへの対応を優先すべきだろうか。 中国進出したメーカーで失敗した事例は数多い。行政との対応が上手くいか なかったり、共同経営者とのトラブル、あるいは、税制や法律の変化による 採算の悪化等で、設備を置き去りにして撤退する例も多い。 中国進出ではなく、中国の工場を上手く活用し、ビジネス展開している企業 もある。また、韓国の東大門市場のアパレル企業から商品を仕入れて成功し た専門店もある。これらの例は、流通の変化に対応したものだ。 統計的に把握しているわけではないが、生産の変化に対応するよりも、流通 の変化に対応した方が成功する率は高いのではないだろうか。その理由は、 日本のメーカーが中国に進出しても、やはり立場はメーカーであるというこ とだ。得意先の企業にビジネスの主導権を握られていれば、中国で安価な製 品を作っても、その分だけ売値も押さえられてしまう。中国製品同士の価格 競争が始まれば利益は上がらないのだ。中国生産で成功するには、その企業 が販売価格までコントロールしなければならない。それには、下請けメーカ ーから脱して、自立したビジネスを行わなければならないのだ。 中国に生産基地を移転する前から、メーカーは問屋や流通企業に主導権を握 られていた。「作るのは自分たちなのに、儲けるのは問屋や流通企業」とい うわけだ。その図式を変えずに中国進出しても、結局は国内の産地問題を中 国に移転しただけである。問題は海外生産ではない。海外生産に伴う流通シ ステム(機能分担と利益配分)の変化であり、それへの対応が迫られている のだ。 百貨店や量販店では、輸入商品の取り扱いが増えているが、流通システムは 変わっていない。したがって、商品原価率が下落しても、劇的な利益率の向 上が見られない。相変わらず、アパレル企業(アパレル問屋)への依存度は 高く、自社の人件費等のコストも高い。徐々にリストラや給与制度の改革も 進んでいるが、それ以上に高齢化(=高給化)が進んでいる。これはアパレ ル企業も同様である。社員の高齢化と共に、人件費等のコストは増大してい る。 ここで問題なのは、小売店もアパレル企業も商品に付加価値を与える仕事、 あるいは直接顧客にサービスしている仕事の割合が少なく、いわゆる管理職 の比率が高いことである。百貨店の社員の大多数は売場管理、売上管理とい った管理職である。商品を作る仕事でもないし、直接顧客にサービスをする 仕事でもない。アパレル企業の営業も同様である。こうした人件費をいくら かけても、商品力や顧客満足度は向上しないのである。 最近は生地問屋が淘汰され、商社調達が増えたが、生地問屋にせよ商社にせ よ、管理職には違いない。 こうした管理職の人件費が重層的に重なり、そのコストを吸収するために、 生産原価を押し下げている。中国生産が増えたのも、こうした中間流通コス トを確保するためだ。しかし、中間流通コストを高めることは、顧客に割高 な商品を売り付けることであり、国際競争力を欠く要因にもなる。 既存の流通経路は高コストである。高コストの流通に依存する企業は競争力 がない。したがって、既存の流通システムに依存している企業は淘汰される のである。 しかし、現在の段階では理想の流通システムが存在しているわけではない。 実際問題としては、既存の流通システムの中でビジネスを行いながら、新し い流通システムへの転換を模索することになるだろう。 新しい流通システムのイメージは次のようなものだ。まず、サプライチェーン (原料から製造、小売までの流通の流れ)を構成する各企業が低コストで運営 されなければならない。プロフェッショナルな集団とフラットな組織。人件費が 比較的低い若者・女性・高齢者の活用。コストダウンの手段として情報システム の活用やインターネットの活用。そして、明確な機能分担とリ スク分担、利益配 分がなされなければならない。重複する機能は省き、無駄を徹底的に排除する。 これまで製造業では徹底したコスト削減が行われたが、流通業、小売業のコ スト削減はまだまだ甘い。これからが本番であり、これができない企業は淘 汰が待っている。 中国進出のような生産段階の改革は、サプライチェーンそのものを崩さない。 仕入れ先は仕入れ先、販売先は販売先だ。しかし、流通の改革とは、既存の サプライチェーンを組み直すものであり、互いの関係性を変えてしまう。仕 入れ先や販売先を変えるかもしれないし、あるいは排除するかもしれない。 それだけに心理的抵抗が強く、取り組みが遅れている。それでも自分が生き 残るためには、取り組まなければならない課題である。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 **************************************************************** 【アパレルウェブ通信・アパレルウェブへのお問い合わせ】 発行:株式会社アパレルウェブ 東京都中央区日本橋小舟町13-10 儘田ビル5F Tel:03-5614-8542 Fax:5614-8541 magazine@apparel-web.com アパレルウェブ: http://www.apparel-web.com 日本繊維新聞: http://www.nissenmedia.co.jp **************************************************************** |
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