159,情報公開と系列崩壊の循環

2002/09/13

皆さん、こんにちは。坂口昌章です。
情報公開の必要性が提唱されますが、現実には「企業秘密」「社外秘」が幅をき
かせている現実。私は、大した秘密もないことがバレルから、「企業秘密」って言
っているんだろう、と考えていますが。
マッチングも単に需要情報と供給情報を公開しても駄目ですね。やはり、仲人や
問屋のような機能が必要です。情報が多過ぎると、誰かに編集してもらいたくな
ります。
こにビシネスチャンスがあるような気がします。
それでは、今週号をどうぞ。


◆情報公開と系列崩壊の循環

日本中の企業が情報公開を行った場合、ファッションビジネスはどのように変化
するのだろうか。その変化に対応することが、情報化時代の生き残り戦略につ
ながる。

例えば、全国のあらゆる繊維関連の企業が情報公開したと仮定する。糸商、機
屋、染色工場、産地問屋、集散地問屋、縫製工場、ニッター、付属卸、アパレル
卸、デザイナー、パターンメーカー、企画会社、店舗デザイナー、デコレーター、
内装業者、小売店等のリストが全て公開されるのだ。

これまでアパレル企業が産地メーカーが直接取引したいと思っても、十分な情報
がなかった。また、小売店がアパレル企業を通さず、オリジナル商品を生産しよ
うとしても、テキスタイルメーカーと縫製工場、デザイナー、パターンメーカー等の
情報がなかった。

膨大な情報が公開されたとしても、情報が多過ぎてどの業者を選んでいいのか
分からない。また、取引を申込まれても、与信の問題で取引していいのか、判断
ができないのである。(この問題はジャパンクリエーション等でも発生している)

情報公開が進めば、格付け機関、あるいは、自社にふさわしい取引先を紹介し
てくれる情報サービスが必要になる。これまでは問屋がその機能を持っていたが、
その機能をどこかが低コストで代行しなければならない。本来ならば、こうした情
報サービスは業界団体や組合等の公益機関が担うべきだろう。海外の事例もある。

しかし、現実問題としては情報公開が進む前に、既存の問屋機能を商社や新しい
コンバーター企業がマッチング機能を代行しようとしている。こうした流通シス
テムが定着すれば、情報公開よりも、特定のサプライチェーンの中で情報を共有
することが課題になるだろう。

一方で、インターネット上にオープンなマーケットプレイスを構築しようとする試み
も始まっている。公開入札のような制度であり、「買いたい・売りたい」「仕事を頼
みたい・仕事を受けたい」というマッチングを自主的に行うものだ。ここでも何らか
の格付けは不可欠になる。インターネット上のデジタル情報は信用に値するもの
か否かが分からないので、少なくともその情報が信頼できるものであることを証
明しなければならないのだ。オンラインで企業の信頼性を判断するには、ISO認
証、取引先企業、設備リスト等の公開などが参考になるだろう。

最終的には、実際の企業が社会から信用を得ることである。そのためには、経
営者が積極的にメディアに意見を発表したり、企業の活動を定期的にプレスリリ
ース等としてマスコミに流すなどの活動が意味を持つ。

こうして企業情報は少しずつ確実に公開されていくだろう。こうした情報が公開さ
れることで、仕事が増えるケースと仕事がなくなるケースが出てくる。右から左へ
と商品や情報を流すだけの存在は必要なくなる。また、他の企業と比較されるの
で、機能とコストは厳しく評価されるだろう。最終的には企業の存在意義が問わ
れることになる。

本当に、市場や流通の中で必要な企業なのか。その企業だけしか果たせない役
割や機能があるのか。横並びではなく、突出した企業、オンリーワンの企業を目
指さなければ、厳しい競争と淘汰が待っているのである。

現在でも、既存の系列は崩壊している。特定の紡績の下請け企業が、商社を通
じて他の販売先を開拓する。量販店アパレルに商品を卸していたニッターが百
貨店アパレルやSPA型アパレルに商品を卸す。紳士服のテキスタイルメーカー
が婦人服に参入する。産元問屋が直接アパレル企業に生地を販売する。生地
問屋がOEM生産事業に参入する・・・。

情報公開の進展は、これまでの系列取引からネットワーク型の取引への移行を
促進している。こうした変化に対応するには、まず自分が変化することである。情
報を公開し、これまで付き合っていなかった分野の企業にアプローチする。小くて
も実績が上がれば、それをまた情報公開する。そして、リアルな実績を積み上げ
ながら、同時に実績情報も積み上げていくのである。

実績を積み上げてもその情報が公開されなければ、誰にも伝わらない。「自分の
評価を自分で行うことは恥ずかしい。評価は他人がしてくれるものだ」という信念
を持っている人も多いだろう。しかし、それはムラ社会のような密なコミュニティが
あればこその話である。(最早、繊維ムラのコミュニティは崩壊している)

情報化時代、情報公開時代は、既存のコミュニティの枠を乗り越えてしまう。いつ
も知っている人と商売するのではなく、毎回初対面の人と商売することになるか
もしれないのだ。だから、格付け、契約、取引ルールが必要になるのであり、同
時に、互いを信頼するために互いの情報を公開し合うことが必要になるのだ。そ
して、情報公開が更なる系列崩壊を生み出すのである。

この流れは、全て情報化が招いたことであり、情報化の流れが止まらない限り、
この循環は続くだろう。流れを止めることを考えるのではなく、こうした循環に自ら
積極的に対応することが求められているのである。

執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任

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