158,問屋流通の崩壊と情報公開の必要性

2002/09/06

皆さん、こんにちは。坂口昌章です。
今回から、情報化、インターネットをテーマに論じていきます。
勿論、アジアスケールのインターネット活用が課題になります。
以前から不思議なのは、インターネットとは国境を超えてコミュニケーションが
できることが特徴であるにも関わらず、なぜかドメスティックな発想の人が多い
ということです。インターネット通販やB2Bでも国内中心ですよね。
本当の意味でインターネットを活用するには、やはりアジアスケールの視点が
重要ではないか、と思うのです。


◆問屋流通の崩壊と情報公開の必要性

インターネットバブルは弾けたが、本当にインターネットを活用するのはこれ
からだ。インターネット通販も伸びるだろうが、既存の業務が受けるインター
ネットの影響の方が大きい。インターネットの影響、というより情報化進展の
影響は確実にやってくる。既存のビジネスはそのまま、インターネットはプラ
スアルファ というわけにはいかないのだ。

情報化が進むとは、情報の流通が圧倒的に増えることである。例えば、イン
ターネットがない時代は、電話、電報、FAX等で情報伝達を行っていた。国
際電話は料金が高く、海外との情報伝達には高いコストが必要だった。しか
し、電子メールを使うようになってからは、海外の人に対する連絡も国内と変
わらない。距離の制約が全くなくなったのである。モバイル機器を使えば、世
界中のどこにいても連絡が取れるのだ。しかも安価に。

会社や商品のプレゼンテーションのコストも大幅に下がった。商品カタログを印
刷し全国に郵送するよりも、WEBサイトに情報をアップした方がコストは低い。
WEBサイトは、放送局であり、出版物である。誰もが低コストで情報発信が可
能になったのだ。

「その割には情報公開が進んでいない」「WEB上に有効な情報が少ない」とい
う声がある。現段階では、情報公開の手段を得ただけであり、情報公開が利益
につながるということが明確になっていないのだ。

これまでの流通システムは、大量生産大量販売が基本だった。一人一人の顧
客の注文にメーカーは応じることができない。誰かが注文をまとめ、生産効率の
よい大量生産につなげることが必要だった。また、メーカーは生産に専念するた
め、物流や代金の回収という機能を持たなかった。それはの機能は、問屋や商
社に依存していたのだ。問屋や商社もメーカーの存在がなければ扱う商材がな
くなってしまう。つまり相互依存であり、その関係を維持するためには、メーカー
は指定の問屋や商社に窓口を一本化することが不可欠だったのであ る。

したがって、既存のビジネスにおいては、メーカーが直接消費者に情報発信する
ことはタブーである。インターネット、WEBという媒体は、基本的に誰でも利用で
きる媒体であり、窓口の一本化とは矛盾してしまうのだ。

しかし、その流通システムが輸入品の増加と共に崩壊しつつある。中国等から
の輸入品の増大は、長年の相互依存関係を意味のないものに変えてしまった。
問屋や商社はメーカーから商品を仕入れなくても輸入すればいいのだ。更に、日
本では原料しか扱っていなかった紡績や合繊メーカーも、中国では織布や染色
まで、あるいは縫製までの一貫した工場を建設している。そして、最終商品を扱っ
ているのである。最早、分業構造や相互依存の関係は崩壊してしまったのだ。

また、輸入品の増大は、商品の価格水準そのものを変えてしまった。中国生産
の商品が価格の基準になり、国内生産の商品価格を引き下げたのである。その
ため、既存の流通システムが見直され、流通の短縮、すなわち、問屋の中抜き
現象が見られるようになった。小売店はアパレル商品を直接縫製工場から仕入
れようとし、アパレル企業は生地問屋ではなく、機屋から生地を仕入れようとす
る。反対に、縫製工場は小売店と直接取引することを求め、機屋はアパレルに
直接売り込もうとしているのである。

しかし、これまでの取引は問屋を介在していたので、そうした取引のマッチング
情報は問屋が握っていた。問屋を中抜きすることは、こうしたマッチング機能を
も中抜きすることにつながるのである。

これまで、メーカーは自ら情報公開する必要がなかった。自社の情報は問屋が
把握しており、黙っていても注文を取ってきてくれた。また、小売店等も自ら情
報公開しなくても、問屋が自社を理解し、必要な商品を選んでくれた。問屋を介
在することでビジネスが安定し、直接コストに換算されない面で様々な機能を果
たしてきたのである。

しかし、その問屋が淘汰されてしまった。メーカーは自ら情報公開し、情報発信
しない限り、その存在さえ誰にも知られないのである。

総合繊維見本市「ジャパン・クリエーション」は、こうした流通の崩壊を背景として
必然的に生まれた。全国の産地による情報公開と情報発信。しかし、情報を公
開することは、更なる競争をも意味する。メーカーを比較検討することが可能にな
り、長年の得意先が他社に乗り換えるかもしれないからだ。

従って、多くの国内メーカーは情報公開について、現在でも結論を見いだせない。
公開しなければ、自社の存在をアピールできない。しかし、あまり公開すると競
争になる。仕事は欲しいが競争は避けたい。その結果、中途半端な情報公開、
情報発信となり、本当に情報を必要とする人には幻滅させてしまうのである。

ここで発想を変えなければならない。情報化時代は、情報を隠せない時代だと
理解しなければならない。企業秘密も同様である。会社の不満分子が匿名で
情報公開することは珍しいことではない。情報の漏洩を防ぐには、できるだけ情
報を公開しておくことである。ガラス張りの経営、ガラス張りの取引。ガラス張り
の評価と報酬システム。自社の情報を公開することが、社会的信用にもつなが
る。そして、最適な取引先との出会いを可能にするのである。

執筆担当:
有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ )
代表 坂口昌章
文化服装学院客員教授
ジャパンクリエーション・総合コーディネーター
文化女子大学特別講義講師 他歴任

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