157,アジアネットワーク市場の理解とビジネス戦略 2002/08/30
皆さん、こんにちは。坂口昌章です。 ◆アジアネットワーク市場の理解とビジネス戦略 日本企業は「ムラ社会」に例えられる。機能的、合理的な組織ではなく、家族や 地域社会のようなコミュニティに近い性質を持っているからだ。仕事にふさわしい 人材をハンティングするのではなく、どんな仕事でも社内の人間に委ねようとする。 優秀な人材を見いだしても、その人材を獲得しようとせずに、社員に対し「ああ いう人を見習いなさい」と説教するのだ。最近になって「アウトソーシング」の活用 が提唱されているが、多くはこれまでの外注、下請けと同様、一度、取引関係を 結べばそれが継続する。 こうした日本企業の性質は、欧米の企業にとっては不可解なものに映るだろう。 欧米企業は、社内に対しても取引先に対しても、常に競争原理を働かせて、 柔軟な関係を構築している。 こうした日本企業の性質は、アジア進出の際もいろいろな面で現れる。例えば、 部品を現地調達せずに、下請け企業共々に進出する。あるいは、現地法人の 経営者や社員も日本から出向させる。また、現地企業や外国企業と提携する のではなく、極力、自社だけで進出しようとする傾向が強い・・・。 こうした独特の性質がプラスに機能することもあるが、マイナスに機能することも 多い。例えば、人件費の高い日本人社員を数多く抱えることは、同業他社との 競争力を損なう。また、日本人だけで固まっている日本企業は現地社会に溶け 込むことが困難であり、それが現地住民との関係を気まずいものにすることも 多い。 それでも現地で商品を生産し、日本に輸出する企業であれば、問題は少ない。 原料の調達と労務管理だけしっかりと行えば、販売先は日本なのだ。 最も問題が生じるのは、現地の市場に進出するケースである。それぞれの国 には、固有の生活スタイルを持つ消費者が存在し、固有の流通、商取引システム を持っている。かつて、アメリカ企業は日本の複雑な流通構造を非関税障壁と 非難した。日本企業がアジアに進出する時に初めて、かつてのアメリカ企業の 気持ちが分かるかもしれない。 基本的にそれぞれの国の固有の事情を理解しているのは、その国の人々であり、 外国のシステムを持ち込んでも簡単には成功しない。(日本市場にアメリカの チェーンストア理論を持ち込んでも、簡単には成功しなかったように) 更に、我々が対象としなければならないアジア市場は、単一の市場ではない。 民族も言語も異なる市場である。しかもそれらの上に、経済や情報の重層的な ネットワークが形成されたネットワーク市場である。 日本企業の多くは、中国市場に単独で進出していくが、例えば、華僑ネットワーク は、政治体制を乗りこえて、中国、台湾、香港、ASEAN諸国を覆っている。 日本の商社ネットワークも重要である。 ファッション分野でも様々な情報ネットワークが築かれている。台湾の「哈日族」の ように、日本のファッション情報は衛星放送やケーブルテレビ、ファッション雑誌を 通じて、アジア全域に拡大している。同時に、韓国の東大門市場から日本に輸出 されるヤングファッションは日本のファッションビジネスにも大きな影響を与えて いる。 ネットワーク型の市場には、ワットワーク型の組織で対応しなければならない。 例えば、中国市場を攻略するには中国企業との連携が必要である。その商品を 韓国でも販売するとしたら、韓国の企業との連携が必要である。ASEAN諸国の 市場を攻略するには、台湾や香港の華僑ネットワークと連携することも必要に なるだろう。 勿論、中国が日本市場を攻略しようとすれば、彼らは日本企業とのパートナー シップが必要になるだろうし、韓国企業が日本市場に上陸する時にも同様である。 こうした企業連携、あるいは、企業ネットワークの構築は、生産と販売の両面で 必要になるに違いない。アジアスケールでビジネスを行う、複数の企業ネット ワークが生まれ、それらの企業ネットワーク間競争が始まるのである。 私は10年ほど前から、中国市場の成長に伴い、こうしたアジアスケールの流通 グループが生まれることを予測していた。そして、その核は、日本の量販店企業 が担うと考えていたのだが、どうやらそれは間違いだったようだ。 大企業が核となりそのグループ企業として傘下に入るというメインフレーム型で なく、自立した企業同士が緩やかなネットワークを築くというインターネット型ネット ワークになるに違いない。 例えば、日本のセレクトショップがアジア全域のデザイナーあるいは、アパレル 企業から商品調達を行い、コンセプトの明確なショップを確立する。そのショップを アジア各都市でも展開するが、その場合は、フランチャイズのような形態で地元の アパレル企業が運営する。あるいは、日本のアパレルがその国のアパレル企業 にブランドライセンス供与を行い、地元で生産しても良いだろう。 反対に、海外のアパレル企業の販売権を日本のセレクトショップが取得して、卸売 ビジネスを展開するというケースも考えられる。いずれにしても、「ショップ が核とな ったサプライチェーンの構築」「アジアネットワークにおけるフランチャ イズビジネス」 「ショップブランドのライセンスビジネス」「アジアスケールのブランドライセンスビジ ネス」「アジアスケールのアパレル企業やショップの格付けビジ ネス」等々が複合 した複雑なビジネスモデルが誕生することが予想される。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 **************************************************************** 【アパレルウェブ通信・アパレルウェブへのお問い合わせ】 発行:株式会社アパレルウェブ 東京都中央区日本橋小舟町13-10 儘田ビル5F Tel:03-5614-8542 Fax:5614-8541 magazine@apparel-web.com アパレルウェブ: http://www.apparel-web.com 日本繊維新聞: http://www.nissenmedia.co.jp **************************************************************** |
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