156,商社丸投げの裏に潜む危険性 2002/08/23
皆さん、こんにちは。坂口昌章です。 ◆商社丸投げの裏に潜む危険性 日本国内で完結していた生産拠点がアジア全域に拡大した。しかし、中国 生産の主役は、紡績、合繊メーカー等の大手製造メーカー、大手商社等で あり、 国内流通の中核をなす問屋(卸商)ではなかった。 海外生産の増加、輸入品の増加は、相対的に日本国内の問屋流通の地位を 押し下げた。アパレル企業は、素材調達を生地問屋ではなく商社から行うように なった。また、縫製メーカーに直接工賃を支払うのではなく、素材の仕入れ、 工賃の支払い、工場の振り分け、生産管理等を全て商社に委託し、「製品買 い」の形態を取るケースが増えていった。 アパレル企業にとって、商社は海外生産も国内生産も一括して請け負ってく れ、複雑な原価管理の作業や縫製メーカーの年間稼働を保証するという難 事からも解放してくれるありがたい存在となった。 更に、商社傘下の企画会社に依頼すれば、商品企画の提案さえ行ってくれる のである。つまり、アパレル企業は、コストのかかる企画生産部門の業務 を アウトソーシングすることが可能になり、直接利益を生み出す営業、販売 に 専念することができるのである。表面的にはこれほど合理的なことはない。 しかし、当然ながら、アパレル企業にとって商品企画とモノ作りは正に生命線で あり、他社との差別化を実現する部門でもある。それをアウトソーシング する ことで様々な問題も浮上している。 まず「商品の同質化」である。 多くのアパレル企業は店頭での動きをギリギリまで見ながら、商品企画を決 定し、生産にかかりたいと考えている。最も重要なのは素材調達である。差 別化を優先すれば、オリジナルの素材(撚糸、糸使い、糸の密度、織組織等) をオリジナルの色で染めなければならない。但し、それには時間と一定量の 生産ロットをクリアしなければならない。 納期の短縮を優先するのであれば、既に染まっている生地を仕入れるか、 在庫 している生機を染色して使うしか方法はない。後者の場合、色だけはオ リジナル 性が保てるが、前者の場合は、店頭で他社製品とバッティングする確率が高い。 また、製品のデザインについても、売れ筋を後追いするので、 他社と似たような 形になってしまう。その結果、店頭には同質化した商品が あふれ、最終的には 価格競争に突入していくのである。 自社で直接機屋から生地を仕入れるのであれば、その段階で差別化を図るこ とが可能だ。しかし、商社に素材調達を依存すれば、その生地がどれだけの 量を生産されたものなのか分からない。というより、生産効率を考えれば、商 社もなるべく数量をまとめようとするだろう。同質化するのは当然である。 デザインやパターンメーキングまで外部に委託しているとしたら、他社でボツ になった企画を回されているかもしれないし、パターンを使い回しているかも しれない。あるいは、自社の製品が競合企業と同じラインで縫製されている かもしれないのだ。 次に「品質や納期が安定しない」ことも問題だ。 商社の多くは多数のブランドを担当している。そして、その多くのブランドを多 くの工場に振り分けているのである。中国の工場は、生産管理や品質管理 の面でかなりバラつきがある。優秀な縫製工場で縫ってもらえば、納期も品 質も安定するが、下手な工場に回されれば、納期も品質も安定しない。その 工場の振り分けを決めるのは商社なのである。 商社が、そのブランドを最有力顧客であると考えれば最高の工場を振り分けて もらえるだろうが、何らかの事情で、更に優先すべきブランドが出てくれば、 優 秀な工場はそちらに回されてしまうのである。 更に、中国の工場自体が外注工場を使うこともあり得る。あまり工賃を値切 られれば、自社工場で縫わずに、外注に出すことは当然である。 問屋の場合、効率は悪くても、小ロットで生産し、オリジナリティを保証した。 何よりも、商品のバッティングは厳しく管理していたのである。問屋は運命共 同体の思想で動いていたが、商社は競争原理で動いている。その違いを認識 しなければならない。 商社への丸投げ(商品企画から生産管理まで全てをセットで業務委託するこ と)は、更に根本的な問題を抱えている。それは、「アパレル企業の存在意義 とは何か」ということだ。 商品企画、生産管理、品質管理を失い、単に売場管理だけを行うのであれ ば、既に崩壊した国内の問屋と同じ道を歩むことになるだろう。産地メーカー の作った商品に利益を乗せて販売するだけの問屋業態は淘汰されていった。 アパレル企業も企画会社が企画して、商社が生産管理した商品に利益を乗 せて販売するだけであれば、同様に淘汰されるに違いない。 商社が直接大手小売店と取引すればいいのである。あるいは、企画・生産管 会社がアパレル機能を担当し、商社とタッグを組むことも考えられる。 百貨店は、委託販売・派遣販売員制度により、販売機能とバイヤー機能を失 った。アパレル企業も商社丸投げにより、商品企画・生産管理機能を失うに違 いない。 アジア地域に生産が拡大したということは、むしろ、素材調達や生産管理機能を 強化しなければならない。目先のコストだけを考え、最も大切な機能を他社に 依存する企業は最終的には淘汰が待っている。 執筆担当: 有限会社シナジープランニング( http://www.j-fashion.net/ ) 代表 坂口昌章 文化服装学院客員教授 ジャパンクリエーション・総合コーディネーター 文化女子大学特別講義講師 他歴任 **************************************************************** 【アパレルウェブ通信・アパレルウェブへのお問い合わせ】 発行:株式会社アパレルウェブ 東京都中央区日本橋小舟町13-10 儘田ビル5F Tel:03-5614-8542 Fax:5614-8541 magazine@apparel-web.com アパレルウェブ: http://www.apparel-web.com 日本繊維新聞: http://www.nissenmedia.co.jp **************************************************************** |
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