120,ファッションによるODAの提案

2002/07/13

 チャネラー7月号出ました。今回の「新市場への新ビジネス提案」
はODAです。そう、宗男ちゃんの大好きなODAです。でも、宗
男ちゃんだけに良い思いをさせてはいけません。ODA予算を強引
に我がファッション業界に導入できないか、という提案です。
 器を作るより、ファッションです。橋や道路も大切ですが、やは
りファッションも大切です。税金で楽しいファッションを。ファッ
ション新党、最後のお願いでございます。


チャネラー連載「新市場への新ビジネス提案」第34回
■ファッションによるODAの提案■
           有限会社シナジープランニング 坂口昌章

●ODA対象の発展途上国の悩み

 ODAとは、経済協力の一種で政府開発援助のことである。20
01年度のODA予算は1兆152億円。凄い規模だ。

 その中の一部を某議員が影響力を駆使し、地元の建設業者を潤わ
せ、見返りに献金を受けたとのこと。しかし、ODA予算は、なぜ
建設業界の仕事だけなのか。経済協力であれば、ファッションとい
う切り口も存在するはずである。

 ODAの対象になるのは、経済的に遅れた国や地域である。そう
した地域で、まず取り組む産業は繊維産業である。しかし、そのほ
とんどは先進国のOEM生産であり、下請けの仕事である。そのた
め、繊維の生産基地は更なる低コストの国や地域を求めて移動して
しまうのだ。

 しかも、OEMや海外資本の流入により、ある程度の経済成長は
実現するので、昔の自給自足に近い経済システムに戻るわけにもい
かない。また、民族的な文化も西欧風のライフスタイルに、民族衣
装も洋服にのファッションに置き換えられてしまうのである。

 工場はあっても、更に安い地域に、より大型で最新鋭の工場がで
きてしまう。オリジナル製品を開発すれば良いと言っても、文化や
伝統の裏付けがないのだから、本物に勝てるわけがない。といって、
民族衣装に戻るには、中期半端に開発が進んでしまっている。

 こうした状況は、実は日本に似ている。日本も昔は固有の文化を
持っており、政治経済上の様々な理由から、西欧文化や洋服を取り
入れたのである。

 幸いにも、日本は世界でも有数の経済大国になり、世界の一流ブ
ランドを大量に消費する市場となっている。また、民族衣装の「き
もの」は完全にはなくなっていないし、洋服の本場であるパリコレ
クションで活躍するデザイナーも存在する。

 しかし、それでも、全体的に見れば、ライセンスブランドが多い
し、日本オリジナルのブランドは少ない。そして、繊維関連の製造
業は空洞化に悩んでいる。

 日本は、アジア地域あるいは有色人種で最も成功し、そして、い
ち早く高齢化社会を迎え、先進国の中でもいち早くデフレに悩んで
いる。そういう意味でも、日本は海外の発展途上国に教えることは
多いと思う。あるいは、日本にしかできない貢献もあるのではない
だろうか。

●それぞれの国か独自の商品を作り、市場を確保する

 発展途上国は、アメリカ流のグローバル経済に参加しなければ、
経済を活性化できない。しかし、グローバル経済に参加すると、常
に競争に晒される。あるいは、自国の文化や伝統が破壊されてしま
うのである。

 例えば、亜熱帯、熱帯の気候の国の人にスーツやネクタイを着せ
る必要はあるのだろうか。また、閉鎖的なビルを建て、エアコンを
完備する必要があるのだろうか。

 本来ならば、気候風土に合った服を着て、気候風土にあった家で
生活することが最も快適である。その国の文化やアイデンティティ
をあくまで守り、その表現方法として最新のテクノロジーを使うべ
きである。最新テクノロジーを使うのは西欧文化、自国の伝統文化
はローテクという分け方は、正しいとは思えない。

 勿論、グローバルスタンダードを完全に否定することはできない。
情報化が進み、世界同時に同じブランドが売れる時代である。しか
し、自国の文化や経済を守るためにも、西欧にはない独自の製品、
デザイン、ブランドを開発し、安定した市場シェアを維持すること
が、その国の経済をも安定させるだろう。特定の国の文化や商品が
世界を支配するよりも、それぞれの国が独自の商品を作り、それら
で世界市場をシェアするという考え方の方がはるかに健全である。
経済的な問題もさることながら、精神的な意味でも意義がある。

 最近、ベトナムをはじめとするアジア雑貨がブームになっている。
手作りの味のあるアジア雑貨は、ヨーロッパの一流ブランドにはな
い独特の魅力がある。

 同時に、アジア諸国で日本のヤングファッションが人気を集めて
いる。欧米のモノより日本のモノの方がカワイイという意見も多い
のである。

 ファッションに憧れる日本の若者は就職がないと悩んでいる。彼
らの力を借りて、それぞれの国のカワイイものを発見し、現地の若
者と独自のファッションを創造する。こうした活動は、「○○ハウ
ス」を建てるよりもはるかに有効ではないだろうか。

●「トロピカル・ファッション」開発プロジェクト

 ODAの対象となるのは、亜熱帯、熱帯の国々が多い。(実は、
日本も江戸時代までは裸に近い格好で仕事をしている人が大勢いた。
明治になって、裸で町を歩くな、服を着て仕事をしろ、彫り物は禁
止、となったのである。だからセンスが近いのだ)

 これらの国では、アメリカ西海岸風のカジュアルウェアを着てい
る人が多い。先進国であるアメリカの服で、格好良く安くて着やす
いということなのだろう。

 ドレスアップすると、いきなり欧米の一流ブランドになってしま
う。これではいけない。やはり、それぞれの国がデザイナーを育て、
欧米とは異なるセンスのファッションを創造し、それを世界に発信
するべきなのだ。

 高温多湿の国では、服のフォルムは平面的でシンプル。その分、
テキスタイルに凝るという特徴がある。きものの生地で作ったアロ
ハシャツがハワイで受け入れられたのも、何か共通するセンスが
あったに違いない。

 ファッションODA計画では、独自のトロピカル・ファッション
創造を支援する。

 まず、お手本という意味でも、日本の若手デザイナーを派遣し、
現地の気候風土に合うという条件をつけて、コレクションを制作す
る。何度かリサーチのために現地を訪れ、現地のデザイナーやテキ
スタイル、アパレル業界の人々と交流する。実際の服を作るのは、
なるべく現地で行うという条件をつけた方が良いかもしれない。

 同時に、現地でもデザイナーを選択し、コレクションを制作させ
る。

 この際、ハイテクが得意な日本のテキスタイルメーカーに素材提
供をさせるのも良いだろう。勿論、現地のテキスタイルを使うのも
良い。

 あるいは、「トロピカル染織デザインコンテスト」を開催しても
良い。日本の美術系、デザイン系の大学と現地の大学とが交流し、
ワークショップ等を開くというプログラム藻考えられる。

 そして、「トロピカル・ファッションウィーク」等のイベントを
開催し、実際にファッションショー、コンテスト入賞作品の展覧会、
アパレル製品や服飾雑貨の展示会、即売会等を行う。

 その後、日本の百貨店等でもショーや販売会を行うのはどうだろ
うか。評判が良ければ、日本に商品を輸出することにもつながる。
その中には、日本の若手デザイナーと契約した地元企業の商品も含
まれているかもしれない。あるいは、才能豊かな現地の若手デザイ
ナーに目をつけ、日本のアパレルや商社が契約を申し出るかもしれ
ない。

 こうした費用を一切合切ODA予算で計上してもらうのだが、大
した金額にはならないだろう。しかし、こうした活動を継続的な行
うことで、どれだけの経済効果が上がるだろうか。しかも、日本の
若者にもベンチャービジネスのチャンスが与えられるのである。

 また、こうした活動の中で、日本の伝統工芸士の方々にも技術指
導をお願いしたい。技術指導というと、すぐに中国の大量生産の工
場を想像するが、独自のブランドを確立しようとすれば、むしろ、
ハンドクラフトの掘り起こしが欠かせない。貧しい国々の中には、
かつては素晴らしい染織文化を持ちながら、技術が伝承しなかった
ものも多い。そうした技術を復活させ、地元の人に教育することは
伝統工芸士こそ最もふさわしいのではないか。優秀な人が育てば、
日本に招き、修行する機会を与えるのも良いだろう。また、日本の
伝統産業としても、様々なメリットが生まれるに違いない。

 外務省、経済産業省の皆様。是非、ファッションODAを実現さ
せようではありませんか。◆