116,商社丸投げの次に来る「真のアパレル企業」

2002/05/03

 チャネラー6月号の「新市場への新ビジネス提案」は、過渡期の
商社ビジネスについてです。
 アパレルの商社丸投げ。当初は生産管理だけでしたが、企画機能
さえも丸投げするアパレルで出てきました。こうなると「アパレル
企業とは何か」という命題が出てきます。
 また、現在の状況は様々ところで無理が出ており、こんな状態が
永く続くとはどうしても思えません。商社はアパレルを逆選別し、
多くのアパレルは商品生産能力を持てなくなくなるでしょう。最終
的には、中国のアパレルの販売代理店やレップとして生きるという
道を選ぶ企業も出るはずです。
 日本オリジナルのアパレル製品を作って欲しい。真のアパレルに
成長して欲しい。そういう願いをこめて書きました。そうでなけれ
ば、本当に日本のファッションビジネスは駄目になると思うのです。


チャネラー連載「新市場への新ビジネス提案」第33回
■商社丸投げの次に来る「真のアパレル企業」■
有限会社シナジープランニング 坂口昌章

●商社丸投げもトータルな管理コストは下がっていない

 ヤング系のSPA型ブランドから始まった生産管理のアウトソー
シング、いわゆる「商社丸投げ」が一般化しつつある。最早、アパ
レル企業は、新ブランド開発の段階で商社に相談するのが一般的だ。
「今度のブランドの生産を全てお願いしたい」というわけである。

 丸投げしてしまえば、面倒な生産管理を考えなくてもいい。アパ
レル企業にとっては都合の良いシステムだが、反面、生産段階がブ
ラックボックス化するという問題も生じている。テキスタイルのこ
とも分からないし、縫製工場のことも分からない。自社のブランド
の商品が、本当に差別化しているのかも分からない。他社と同じ商
品をネームだけ付け替えて納品されているのかもしれないが、その
区別もつかないという状況である。

 中には、商品企画も含めて丸投げしているアパレル企業もある。
生地も縫製仕様も関係ない。小売価格と納期と数量が適正ならいい
と考えているのだ。こうなると商社も楽だ。他ブランドでボツに
なった企画を振ればいい。アパレル企業は何も分からないのだから。

 丸投げされた商社は、生産管理や商品企画を傘下の企画・生産管
理会社に更に丸投げしている。

 これらの企画・生産管理会社のスタッフの多くは、アパレルや問
屋をリストラされた人達だ。高い給料をもらっていた人達が、安い
給料で働いている。元の給料が高すぎたかもしれないが、それなら
ば社内で給与制度を見直せば良かったのである。それができないか
ら、リストラした。そして、アパレルの下請けをしているのだ。結
果的にスタッフの給料は下がったが、企画・生産管理会社や商社の
マージンが増えているのだから、管理コストが下がったわけではな
い。

 結局のところ、国内生産から海外生産に切り替え、その工賃の格
差によってコストダウンを図ったに過ぎないのである。

 しかし、一部の企業だけが海外生産を行っているのであれば競争
力も出てくるが、ほとんどの企業が海外生産を始めたのであれば、
相対的な競争力はなくなる。むしろ、商品単価が下落した分を数量
でカバーしなければ売上が下がる。また、厳しい価格競争は利益幅
の下落も招いてしまうのである。

●中国の優良工場の奪い合いが始まっている

 中国の生産技術が向上したと言われるが、全ての工場の技術が上
がっているわけではない。一部の優良工場の技術は上がっているが、
日本国内の品質管理基準に対応できない工場の方が圧倒的に多い。
そして、日本国内ですぐに通用する工場はラインを奪い合っている
のが現状である。

 しかも、商社は複数のアパレルから生産委託を受けている。A社
の品質に合わせた技術指導を行ってようやく軌道に乗った工場に対
して、何らかの理由で商社が優先するB社の商品を投入するという
ケースもある。当然、A社の商品は別の工場に振られてしまう。こ
れが繰り返されると、いつまで経っても品質や納期が安定しないこ
とになる。

 また、特定の縫製工場を指定して発注しているつもりでも、多忙
になれば、他の工場に外注に出してしまうという例もある。当然、
品質のレベルは下がる。

 品質管理も納期管理もしっかりしている。しかもコストがリーズ
ナブルという工場は決して多くない。商社間でも、同じ商社の中で
も担当者同士でも、あるいは、企画・生産管理会社間でも奪い合い
を演じているのである。

 結局、アパレル企業にとっては、いつまでも品質や技術レベルが
安定しないことになる。生産管理を放棄し、商社に丸投げするとい
うことは、こういうことを覚悟しなければならない。

 丸投げに慣れたアパレル企業の担当者は、理由もなくコストダウ
ンを要請している。円安になろうと、原料が高騰しようと、中国の
人件費が上がろうと関係ない。「とにかく、去年よりも3割安い価
格設定をしたい」というような無理な要求を出しているのだ。

 こうなると、余計に品質や技術は安定しない。

 加えて、企画・生産管理会社のスタッフも仕事が馬鹿馬鹿しく
なってくる。コストダウンの欲求は、自分達の利益を減らすことに
直結するからだ。スタッフは待遇の悪さに耐えかねて、次々と辞め
ていく。こんな苦労をして、儲からないのなら、自分がアパレルを
始めようと考える企画・生産管理会社が出てくるのは当然だろう。

●アンチ丸投げの差別化アパレルが登場する

 以上、紹介したように、商社への丸投げという形態は、そう長く
続くものではない。過渡的現象と判断すべきだろう。事実、商社は
限られた資源を有効に使おうと考え始めている。即ち、アパレルの
逆選別である。力のないアパレルは、商社から見切りを付けられ、
オリジナル商品の調達ができなくなるだろう。

 こうなると、アパレル企業は商社が提示する商品を仕入れるしか
なくなる。韓国や中国のアパレルの商品を仕入れ、販売するという、
問屋への逆戻りが始まる。アジアの集散地問屋のようなポジション
である。これはこれで生き残るかもしれない。しかし、最早メー
カーとは呼べない存在になるだろう。

 一方で、丸投げの反動が出て、徹底した差別化を図るメーカーが
登場するだろう。品質にこだわり、モノ作りを重視した、日本国内
及びアジアのリッチ層を対象とするアパレルメーカーが登場するに
違いない。

 この種のアパレルメーカーは、商社に丸投げするようなことはし
ない。日本国内に自社工場あるいは提携工場を持ち、技術開発や見
本生産を行い、中国でも協力工場を指定し、技術指導を行いながら、
常に目の届くモノ作りを実践する。勿論、素材調達も他人任せには
しない。国内外の産地から直接素材調達を行う。

 こうした新しいタイプの(ある意味では真っ当な)アパレル企業
が出てきて、ようやく日本のオリジナルブランドがアジア市場で受
け入れられる可能性が出てくるのだ。

●アパレル業態の集約と真のアパレルメーカー誕生

 結果的に、アパレルはいくつかのタイプに集約されていく。

 第一は、勝ち組のSPA型アパレルである。商社と連携しながら
グローバルソーシングを行い、国内市場に独自のポジションを築き、
その勢いでアジア市場にも進出していくのだ。

 第二は、商社、あるいは韓国、中国のメーカーから商品を調達す
る新しいタイプの現金問屋型アパレルである。最早、オリジナル商
品を開発することは諦め、編集のセンスで小売店に対応していく。
それでも、独自の品揃え店のプロトタイプを確立すれば、アジア市
場に進出していくことも可能になる。

 第三は、こだわりのモノ作りを行う、真の意味のアパレルメー
カーである。ある意味では、ヨーロッパ型のアパレル企業であり、
真のブランド構築を目指すことになる。そして、アジア市場、欧米
市場に進出していくだろう。この種のアパレル企業には、技術者の
存在が必須条件になる。

 私は、縫製工場から、このタイプのアパレル企業への転身を期待
したいと考えている。 以下は私の理想のシナリオである。

 現在の段階では、商社と中国工場とのパイプ役を果たし、実際に
中国等でのOEM生産を行っている縫製工場も、やがて企画力を高
め、オリジナルブランドを中国国内で販売するようになる。しかし、
中国国内でも、差別化商品が求められ、そのニーズに応えるために
日本国内のテキスタイルを使用する。また、日本国内でのブランド
認知度があれば、更に有利な条件で中国国内に進出できることから、
日本国内でのビジネス展開も開始する。つまり、中国から国内への
Uターンブランドであり、こうしたブランドが再度アジア市場に進
出していくことになるのだ。

 新しい勢力は、辺境から生まれる。縫製工場という辺境から、世
界に通用する日本オリジナルのアパレルメーカーが誕生することを
期待したい。◆