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115,東レの経営改革をヒントに改革を進めよう
2002/05/03
日本繊維新聞4月24日・坂口昌章の日本印のファッション考は、
東レの経営改革について意見を書きました。
東レがトップ交代し、今回の経営改革案を発表したことに対し、
北陸産地の皆さんは裏切り行為と感じているかもしれません。国内
生産設備の維持、フル稼働フル販売の看板を降ろしたのですから。
しかし、冷静に考えれば、このことは何年も前から分かっていた
ことです。東レの掲げていたお題目は、国際ビジネスの中では到底
維持できません。また、東レの中国への直接投資と日本国内への投
資を比較しても、どちらの方向を向いているかは明白です。
できないことを言い続けて、期待を持たせ、結局、方向転換する
というやり方は罪深いことだと思います。
それでも、東レの経営改革を攻撃するよりも、それを参考に自ら
を変革しようという提案です。一見すると、東レのヨイショ記事と
思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。
私は最初から東レの経営者の発言に対して眉に唾をつけて聞いて
いました。あのような政治的な発言を信じてしまう製造業者の甘さ
に、言いようもないもどかしさを覚えているだけです。
坂口昌章の日本印のファッション考(日本繊維新聞2002年4月24日)
■東レの経営改革をヒントに改革を進めよう■
有限会社シナジープランニング 坂口昌章
4月1日に発表された東レの経営改革は、時代の変化に対応しな
ければならない企業戦略の必然的な転換である。むしろ、もっと早
く行うべきだったものを、これまでは問題を先送りにしてきたと言
えるかもしれない。
榊原副社長は記者会見の席上、「東レの強い点は技術力とグロー
バルな体制、弱い点は営業力」と発言している。東レがこれまでお
こなってきた多額の海外投資は、そのままグローバルな生産体制に
つながった。しかし、それを販売する営業体制は旧来のままであり、
営業力が弱いとすれば、海外工場と国内工場のフル生産など、到底
無理な話だったのである。
問題先送りの原因の一つは、北陸産地に対する配慮だったのでは
ないか。「事業規模の維持・拡大」「フル生産・フル販売」の看板
を降ろすことは、生産体制の縮小、つまりリストラにつながる動き
を明言することになるからだ。
しかし、辛くても真実から目をそらすことはできない。むしろ、
今回の東レの経営改革を他人事とせずに、自らの経営改革モデルに
しなければならない。
東レは、繊維、ケミカル、プラスチックを「コア事業」から「基
盤事業」へと変えた。基盤ではあっても、それだけで利益が上がる
とは限らない。むしろ、基盤から何を育てるのか。どんな事業の芽
を伸ばすのかが問われている。
そして、「情報通信」「ライフサイエンス」「環境・安全・アメ
ニティ」の3つの領域を「戦略的拡大事業」とした。既存の利益を
追求するのではなく、将来性のある事業に投資する。企業戦略とし
ては王道である。
北陸産地のテキスタイル製造業者もまた、従来のコア事業である
テキスタイル生産を基盤事業と位置づけ、そこから新しい芽を見い
だしていかなければならない。これには、産学連携も重要な意味を
持つだろう。現在持っているビジネス資産とは何か、それをどのよ
うに活用すべきか、という課題は、当事者には分かりにくいものだ。
むしろ、大学の研究者等、第三者の視点が重要になるだろう。
また、中国、韓国に近いという北陸産地の地理的条件も考えなけ
ればならない。江戸時代の回船問屋がアジアスケールでよみがえる
かもしれない。その場合、どの都市をどのようにつなぐのか。その
中で、北陸はどんな位置にあるのか、という視点が必要になる。
情報通信、ライフサイエンス、環境・安全・アメニティという要
素についても、自社のこととして研究を進める必要がある。情報通
信網も光ケーブルという繊維を都市の中に織り上げていくものだ。
また、人間の身体も繊維でできている。環境・安全・アメニティと
いう要素の中にも、様々な新素材が必要とされるはずである。
東レの経営改革とは時代への対応である。批判するよりも、それ
をヒントに改革を進めたい。◆
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