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080,セーフガード報復のシナリオ
2001/06/04
日本繊維新聞5月23日付の「坂口昌章の日本印のファッション考」は、
セーフガードについて述べた。私は信念を持って、セーフガードには反対して
いる。その理由は、ここに書いた通りである。結局、メーカーの利益にならな
いのだ。その割には、無用の期待を煽り、もっと大切なことを考えることから
目を逸らせている。
ここで述べた報復の予想も重要だ。まだ、中国は賢明にも具体的な報復措置
を行っていない。でも、報復措置が取られたりしたら、マスコミはヒステリッ
クに報道し、繊維製造業は天下の悪者になってしまうだろう。
ファッションはイメージが大切だ。若者に夢を与え、消費者にも夢を与える
ような情報発信を心がけることを考えるべきだと思う。
(日本繊維新聞2001年5月23日付)
■セーフガード報復のシナリオ■
有限会社シナジープランニング 坂口昌章
中国がWTOに加盟するのはほぼ間違いないが、現在の中国はWTOに加盟
していない。したがって、WTOのルールと言っても、中国がそれを遵守する
義務はない。従って、自由に報復措置を取ることできる。報復とは、自国が受
けたダメージ以上のダメージを相手に与えることである。相手が日本となれば、
少なくとも50倍、多ければ100倍程度の報復を考えるのではないか。
セーフガードの発動は、WTOに認められていることであり、責められるこ
とはない。しかし、少なくともセーフガード後の状況を予測することと、報復
の予測をしておくべきだと思うのである。
セーフガードを発動しても、輸入が減ることはない。前年並の輸入は認めら
れるのである。その場合、輸入実績のある企業に輸入枠が割り当てられる。
ネギの例でも分かるように、セーフガードが発動されると、生産国内の商品
価格は下落する。従って、仕入価格は安くなる。
安い商品を輸入する権利を得て、しかも新規参入者もないのだから、輸入商
社にとっては笑いが止まらないだろう。国内産業の保護のために発動された
セーフガードだが、実際に利益を上げるのは輸入商社なのだ。
さて、輸入増加の制限がされている数年間の間に、国内生産者はどのように
対応すればいいのか。その選択肢は多くはない。
第一は、合理化等により輸入品に負けない価格競争力を獲得すること。第二
は、外国ではできないような新しい商品を開発すること。第三は、競争の少な
い分野に商品を転換するか、転業すること。以上のいずれかを数年間で実現し
なければならないのである。
さて、報復とはどのようなものか。通常は、自国の輸出を制限されたのだか
ら、相手の輸入を制限するという手段を取る。しかし、中国の場合、輸入を制
限しても中国国内の産業がダメージを受けることが多い。あるいは、既に中国
国内に生産基地が移っているので、輸入制限をしても報復にはならないのであ
る。
しかし、数は少ないが、いくつかの商材を輸入制限することで日本にダメー
ジを与えられるものもある。
その筆頭がテキスタイルである。特に、中国国内の縫製工場で加工したもの
を再び日本に輸出するものだけに限定すれば、輸入制限しても中国はダメージ
を受けない。しかも、日本資本の商社、工場だけを輸入制限の対象とすれば、
中国側のダメージは最小限で押さえられる。
ユニクロ人気で湧いている産地も、仲間が発動したセーフガードにより、テ
キスタイルの中国輸出に制限が加えられる可能性を考えなければならない。
また、輸出制限や輸出特別課税という手段もあり得る。例えば、生糸や繭、
カシミヤ、アンゴラなど、中国からの輸入の比率が高い原料を制限されたり、
報復のための特別税をかけられることで、国内製造業は相当なダメージを受け
るだろう。
補助金の申請を役所に陳情することと、セーフガード発動は次元の違う問題
である。補助金の陳情をどんなに行っても、自らの利益が削られることはない。
しかし、セーフガード発動は、相手国の利益を損なうことを要求することであ
り、当然、報復の覚悟をしておかなければならないのである。◆
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