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073,「業界の正義」と「消費者の正義」
2001/04/03
2001年3月28日付けの日本繊維新聞の「坂口昌章の日本印のファッション考」
では、あえて苦言、それも大苦言を呈した。
あるまで私見だが、私は日本の製造業が生き残るには、中国の存在を前提に
しなければならないと考えている。そのためには、単に敵対的な態度を取るの
ではなく、いかに連携し、自社の利益につなげるか、を考えなければならない。
技術移転の問題にしても、商社がベテラン技術者を中国に派遣し、技術指導
している例が多いが、これでは国内製造業者にとっては、何の利益にもならな
い。
私は、技術提携は大いに結構だが、必ず、国内メーカーと海外メーカー同士
が技術提携の契約を結び、国内メーカーが技術料なり指導料を受け取れるよう
にすべきと考えている。また、その製品を日本に輸出すに際には、提携してい
る国内メーカーを通して販売することを約束させる。更に、国内メーカーが第
三国に輸出する際には、下請け工場として協力を約束してもらう。その場合は、
一切、勝手に販売してはならないことにする。
こういう基本的な合意の元で、国内メーカーは中国のメーカーとも提携して
いくことが必要ではないか。
敵対していると、情報は入って来ない。商社にだけ情報が集中しているのは、
国内メーカーの経営者の意識が古いままであることも一因だろう。
一部の中国のメーカーは、既に商社に対する不信感を表明している。
業界のリーダーたらんとする者は、自分の言動がどのような結果を招いたか、
を冷静に分析しなければならない。行政や一般組合員に対するパフォーマンス
ではなく、結果が問題なのだ。結果が出せないリーダーは、速やかに世代交代
すべし。それが業界への貢献につながるだろう。(またまた苦言が出てしまった
ので、この辺で、おわり。あとは本文をどうぞ)
坂口昌章の日本印のファッション考(日本繊維新聞2001年3月28日付)
■「業界の正義」と「消費者の正義」■
有限会社シナジープランニング 坂口昌章
全国の織物産地の人々は、国内製造業の空洞化を訴えている時、自分の主張
には正義があると信じていたはずである。セーフガードについても同様だろう。
洪水のような輸入品の増大が産地の危機、産業の危機を招いており、黙って見
過ごすことはできないから、行動したのである。セーフガードの発動は、国際
的に認められた手続きである。しかしこれまでは、日本の繊維業界の団体が発
動を要請したことがなかった。つまり、伝家の宝刀。今こそ抜くべき時である。
しかし、一般マスコミは「ユニクロ潰し」と囃し立てた。セーフガードの発
動は、消費者の不利益を招くと報じた。チェーンストア協会も反対した。タオ
ル業界内部の中国進出企業も反対の陳情を行った。ここに至り、正義の味方は、
いつのまにか消費者の敵と見られるようになった。
勿論、マスコミの報道にも問題がある。一般の生活者がセーフガードに対す
る十分な知識を持っていないことも問題である。しかし、それらを全て認めた
上で、繊維業界の側も反省すべき点がある。
製造業や流通業にとって正義とは何か。それは、良い製品を安く消費者に提
供することである。そのための努力を惜しまない企業に対して、消費者は拍手
を送るだろう。
これまで製造業者は、問屋や小売店などの、得意先の利益を守ることを正義
と考えてきた。問屋を飛ばして、消費者に直接販売することは商道徳に反する
悪い行為であると。かつては、得意先の利益を守ることと、消費者の利益を考
えることは矛盾していなかった。一生懸命良い商品を作って、問屋に納めるこ
とが、そのまま、消費者に良い商品を提供することにつながっていた。問屋が
なければ、消費者は小売店から商品を購入できないのだから。
しかし、小売店が増え、流通経路が複雑になり、輸入品もあふれるように
なった。状況は変わったのだ。今こそ、製造業者は正義について考え直さなけ
ればならない。安くて良い商品を消費者に提供することが正義なのだから、中
国で生産し、安い商品を提供しているユニクロは正義の味方である。同時に、
国内のテキスタイルメーカーに生地を発注しているユニクロは、メーカーに
とっても正義の味方だ。しかし、彼らの優先順位は、消費者にとって正義の味
方であることだ。中国において、国内メーカー以上のテキスタイルが調達でき
るようになれば、躊躇なく中国からテキスタイルを仕入れるだろう。
また、企業は利益をあげることが正義である。利益をあげるから、社員を雇
用することができるし、税金も納められる。競争に打ち勝って利益をあげる企
業になることが、国益に貢献することである。
消費者に安くて良い商品を提供し、しかも健全な利益をあげる企業であるこ
と。それを実現するのが経営者の正義である。そのためには、昨日までの仕事
の内容を変えることも必要である。ビジネス環境が変わったのに、自分の仕事
をだけを頑固に守ろうとしても、それは正義ではない。単なる頑迷に過ぎない。
頑迷ゆえに利益をあげられないのだとしたら、経営者失格である。
繊維業界は、もう一度、消費者の正義の味方に戻らなければならない。消費
者に存在意義を認められない企業は存続することができないのだ。◆
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