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040,BtoBが流通を変える/デジタル私塾のすすめ
2000/07/01
チャネラー8月号が出ました。8月号は、ITとファッションビジネスの大特
集。当然私も、B2Bについて寄稿しています。(ですから、連載と合わせて
2本)
また、東京、ニューヨークを股にかけて活躍中のインターネットビジネス・コ
ンサルタントの滝沢哲夫さん(現在、いろいろと共謀しています)も執筆。
さらに、T−人でコラムをご一緒している井上和美さんもバッチリ2本書いて
います。いわゆるファッション業界誌ですが、今月号に関しては、是非、その
他の業界の人にもお勧めしたいと思います。
■BtoBが流通を変える■
有限会社シナジープランニング 坂口昌章
◆「BtoC」から「BtoB」へ
「BtoC」は、ビジネスtoコンシュマーの意味で、直接消費者を対象に
する商取引、即ち、小売を示す。インターネットによる小売は、店舗コスト、
店頭在庫のコストが必要ない。そのため、価格競争力で店舗流通に勝っている。
既存の大手流通企業がインターネット流通に進出するまでは、ネットベン
チャー達が次々と新業態を開発し、株式市場に上場し、ブームを巻き起こした。
しかし、現在では、いつまでたっても赤字体質から脱却できない「BtoC」
から撤退するベンチャーキャピタルも出てきた。「BtoC」の赤字の原因は、
膨大なシステム投資と物流機能への投資、ブランドイメージを高めるための宣
伝広告投資である。
それに引き換え、「クリック&モルタル」と呼ばれる既存の小売店舗を持ち
ながらインターネット流通に進出した大手企業は、ブランドイメージも確立し
ており、既に物流機能も整備されている。システム投資は、技術革新により、
年々低減している。
新たに注目されているのが「BtoB」、即ちビジネスtoビジネスの業者
間取引である。「BtoB」は「BtoC」よりも一件あたりの取引額が大き
いし、まとまったビジネスが可能である。しかし、「BtoC」と同様、既存
の流通システムや取引形態を踏襲していたのでは成功は危うい。
◆「BtoB」では、業界ノウハウが重要
「BtoB」のビジネスには、業界特有のノウハウが必要である。一般の
バーチャルモールのように、欲しい商品を検索して選び、購入の手続きを行い、
決済すればいい、というものではない。そうしたシステムは、既に完成した商
品が倉庫に入っている状態であれば成立する。しかし、テキスタイルやアパレ
ルのように、品種やアイテムが圧倒的に多く、受注生産に近いシステムの場合
は、単純な検索では商品に出会うことさえできないだろう。
また、全ての情報が公開されることもあり得ない。たとえば、某商社が糸や
テキスタイルの価格をwebに公開し取引を行うサイトを作ったとする。必ず、
「××サイトよりも10%安く販売します」という業者が現れるに違いない。
付加価値の高い商品を扱う企業では、こうした事態を防ぐために、閉鎖的な
サプライチェーンを構築する。そして、その範囲で情報を共有し、外部には公
開しないのだ。その結果、webによる取引は、業界ノウハウを持っていない
一部の業者間の取引に限定される可能性もある。
商取引には、オープンな情報公開の元に行われる「BtoB」と、閉鎖的な
情報環境の中で行われる「BtoB」が存在する。電話一本で右から左へとい
う商売であれば、単純な「BtoB」で良い。しかし、アパレルやテキスタイ
ルのような、セラーとバイヤーが互いに情報交換をしながら企画そのものを煮
詰めていくという「コラボレーション型」の取引に関しては、単純な「Bto
B」では間に合わないのである。
◆「BtoB」と二つの「CtoC」
ファッション商品の取引は、商品そのものの価値だけでなく、店舗作りや運
営のノウハウ、宣伝広告のノウハウ、ブランド価値等を総合して判定しなけれ
ばならない。それらの情報を公開し、新規取引先にアピールすることが必要で
ある。
つまり、ファッション商品の商取引とは、個々の商品取引ではなく、企業対
企業即ち「CtoC(カンパニーtoカンパニー)」の取引だ。企業と企業が
取り引きする場合に、どのような情報公開の方法が必要なのか。情報公開のレ
ベルは何段階設定し、各々の段階で、何を互いに確認すればいいのか。それが
見えれば、企業対企業の取引システムが構築できるだろう。(ちなみに現在の
「BtoB」サイトには、こうした視点が欠けている)
同様に、企業と顧客の関係も考え直す必要がある。既存の「BtoC」サイ
トは、「一見(いちげん)の客」を対象に考えている。モデルが、セルフサー
ビスの量販店である。「1to1マーケティング」を基本に考えるのならば、
「一見の客」ではなく「馴染みの客」を前提に考える。どうしたら、客に馴染
みになってもらうのか。そして、馴染みの客ならではのサービスを、どのよう
に提供するのか。
馴染みになるという行為に、決済システムは必要ない。むしろ、互いの情報
交流が重要になる。顧客の情報を受信し、情報に基づく企業活動を顧客に発信
する。それによって、両者は単なる商取引の相手ではなく、信頼や一体感が共
有できるだろう。
馴染みの客とは、企業と顧客が結びついた状態である。即ち、「CtoC
(カンパニーtoカスタマー)」というコンセプトになる。「BtoB」を生
かすには、二つの「CtoC」が大切なのだ。
◆「BtoB」は業態転換をもたらす
「BtoB」で何が変わるのか。
第一に、情報伝達が極めて早くなる。第二に、情報経路が多様化、分散化し、
情報をコントロールすることが困難になる。情報が頭ごなしに流れていく。そ
の結果、機能していない流通は確実に排除される。そして、機能とリスクと利
益の再配分が始まる
既存の流通は情報を遮断することで成立していた。各流通段階で容易に情報
の遮断が行えた。まさに、サプライチェーン(流通の鎖)である。サプライ
チェーンは分業構造を基本にした考え方だ。SCM(サプライチェーン・マネ
ジメント)という概念は、既存の流通から「BtoB」へと移行する過渡的な
概念と言ってもよい。
今後は、分業ではなく、「兼業」や「統業」が増える。インターネットによ
りメーカーが小売業となり、卸売業になりうるからだ。小売店や卸商がメー
カー機能の一部を担う場合も出てくるだろう。業態の際は曖昧になり、それぞ
れの企業が網目状につながっていく。
これは、上意下達を基本にした既存の情報システムが、分散構造を持ったイ
ンターネットに転換したのと同様である。情報は流れるのではなく、網目を自
由に運動する。商取引も流通ではなく「網通」になり、鎖状のサプライチェー
ンは、クモの巣状の「サプライウェブ」となるのである。そして、マネジメン
トは不可能になり、サプライチェーン・マネジメントという発想も、2〜3年
で姿を消すだろう。
「BtoB」時代に生き残るには、業態変革が条件になる。製造、卸、小売
という整然とした流通段階は崩壊する。情報の遮断から、「情報の公開と共有
を原則とした新しいビジネスモデル」が生まれるのである。
◆「ハイテク御用聞き」と「ハイテクよろず屋」
現在、店舗流通の中で、最も成功しているのがコンビニである。誰もが買え
る商品を最大限の在庫回転率で回すことにより、高効率のビジネスを展開して
いる。
しかし、コンビニも情報化の進展の中で自らの姿を変えようとしている。
一つは宅配サービスである。宅配とは、昔の御用聞きである。限りなく「1
to1」の考え方に近い。これを徹底すれば、今までの効率追求型とは異なる
ビジネスモデルが必要となる。
二つめが、インターネットを利用した様々なサービスの情報&物流基地とし
ての機能である。現在でも、公共料金の払い込み、チケット予約、書籍の受け
渡しなどの業務が増えつつある。これらは、高回転率、高効率というビジネス
モデルを覆すものであり、下手をすると、コンビニは大幅に利益を落とすこと
にもなる。それを防ぐには、現在の物流センターと店舗の間の情報システムか
ら、顧客と物流センターの間を結ぶ情報システムへの転換である。
情報化の進展により、「コンビニ」が「御用聞きのいるよろず屋」に変わる。
その他の流通も、ビジネスの質が変わるだろう。「市場シェア」より「顧客
シェア」。平均的な商品から、個性的な商品へ。
こうした変化は、コンビニ以外の流通にも派生する。そして、大量生産、大
量流通、大量販売を基本とした既存の流通から、少量多品種生産、少量多頻度
流通、固定客への継続販売を基本にしたビジネスモデルに転換していくだろう。
それを補佐するのか「BtoB」である。
一方で、全く反対に店舗流通のメリットを最大に生かすためにインターネッ
トが使われる。より大量の「カジュアル・ブランド商品」を扱う無店舗販売の
成長も、同時に見られるはずだ。ここでも、「BtoB」が生きるだろう。
「BtoB」とは、それだけで完結するものではない。既存の流通を巻き込
み、変容させるパワーを持つ。あらゆるメディアが複合的に活用され、最終的
にはライフスタイルの変化をもたらし、更に新しい業態を必要とするだろう。
「BtoB」は、これから始まる大変革の第一歩に過ぎないのである。◆
■連載・新市場への新ビジネス提案■
デジタル私塾のすすめ
有限会社シナジープランニング 坂口昌章
◆インターネットは教育媒体として最適
現在、インターネットは、商取引ばかりが注目されているが、本命は教育と
考えている。教育と言うと固くなるが、お稽古ごと、趣味、仕事の技術、ゲー
ム攻略法、ダンス等、あらゆる次元の自己実現を満足させるものと解釈できる
だろう。
インターネットの優れている点は、非同期の媒体であること。学校のように、
決まった時間に決まった場所に出かける必要がない。いつでもどこでも自由に
学習できる。
これは教師にとってもメリットがある。自宅にいながらにして世界中の学校
で教えられるのだ。優秀な教師は数少ない。インターネットの活用は、数少な
い優秀な教師に多くの仕事を与え、資質の低い教師からは仕事を奪うかもしれ
ない。
日本の義務教育では、学生が学校や教師を選べない。そのため、競争原理が
働かず、学校や教師の質が低下している。インターネットを利用すれば、遠方
の学校の授業を受けることもできるし、一人の教師が数多くの学生を教育する
ことができる。学生側が教師を比較することで、教師の格付けが起こり、教師
ものほほんとはしていられなくなるだろう。
学校ではできていないが、塾では競争原理が働いている。そのため、塾の教
師の方に優秀な人材が増えているのである。学校が保護主義を改め、自らを厳
しい競争原理の中に置かない限り、根本的な学校問題は解決しない。
インターネットを利用した情報公開も行って欲しい。現在の学校は、閉鎖的
であり、情報を制限している。学校がいじめ等の問題を隠すのも、情報を隠蔽
する環境に問題がある。 たとえば、常に学校内の授業風景をビデオ等で録画
し、必要ならばいつでも父母が見られるようにする。授業参観だけでなく、い
つでも授業参観ができるようにする。オープンな学校環境を作り上げるのであ
る。
父母がボランティアで順番に、自分の体験談等を話す授業があってもいいし、
知事や市長、警察署長、消防署長、病院の院長、地元企業の社長等が授業をし
ても良いだろう。
情報化時代の教育とは、いかに情報を公開し、オープンな環境を創り出すか、
にかかっているのではないか。
◆インターネットを利用した教育手法
インターネットを活用することで、教育の手法そのものが変革するだろう。
テキストだけでなく、画像や音声など、あらゆる手段が活用できるからだ。
「視聴覚教育」という言葉は以前から使われていた。しかし、学校では未だ
に黒板に板書し、それをノートに写すというスタイルが多い。どんなに優れた
文章で表現しようと、リアルな映像には適わない分野がある。戦争の悲惨さを
文章で表すよりも、具体的な映像を見せた方が効果的である。デジタルなメ
ディアを活用することで、ようやく本格的な視聴覚教育が可能になったと言え
るだろう。
インターネットによる教育は、次のようなものになるだろう。
まず、学習のシラバスを画面で確認する。(義務教育の場合は、保護者に公
開する)
(1)概要、(2)学習の目的、(3)学習の方法、(4)資料、(5)課
題及びワークの詳細、(6)討議項目、(7)試験の学習ガイド、(8)成績
評価の基準等である。資料は、WEB上に用意し、参考資料は世界中のWEB
リストから選ぶことができる。
高等教育機関の場合、学習内容に納得してから、受講申込を行う。授業のレ
ベルによっては、事前に試験を行う必要もある。試験に落ちたら、試験用学習
プログラムを用意し、受講させる。
授業に望む前に、学生は資料を読まなければならない。その上で、先生は課
題を与え、学生からの質問に答える。アメリカのインターネット大学では、
24時間以内に学生の質問に答えない教師はクビになるとのこと。常に出てく
る質問に対しては、答えをデータベースに用意しておけばいいだろう。
また、学生からの質問をメーリングリスト等で、学生にフィードバックし、
そのテーマで議論するという方法もある。
教科書という印刷媒体を中心にした教育では、その内容をいかに理解し、暗
記するか、が中心になる。しかし、インターネットという媒体は、暗記するの
ではなく、活用すること。理解するだけでなく、自ら思考すること。いろいろ
な人と会話をしながら、論理を組み立てていくことが中心になるだろう。これ
は、メディアが持つ性格故である。同時に、情報化時代に必要な知識やスキル
とは、受け身ではなく、積極的、自主的なものになるに違いない。
インターネットに欠けている点は、人々とのコミュニケーションである。
メールや画像でのコミュニケーションは可能だが、フェイスtoフェイスのコ
ミュニケーションには、それ以上の意味がある。実際に向き合って対話すると、
相手の動作や気持ちの変化が、自分に影響を与える。気持ちだけでなく、肉体
的にも影響を与える。脈拍や呼吸数も同期していくのだ。互いが影響しあい、
共鳴することで、自分一人では考えられない相乗効果が生まれる。これは、コ
ンサート会場等で感じる共感と共通するものであり、リアルな触れ合いがもた
らす効果である。
こうした機能は、集中的なスクーリングで補う必要があるだろう。(今の学
校は、同じ教室にいながら、教師と学生、あるいは学生同士が共鳴することが
あるのだろうか?)
◆デジタル私塾による教育立国
インターネットによる教育は、いつでもどこでも勉強ができる。同時に、教
師がどこにいても(インターネットに接続したパソコンさえあれば)教育する
ことができる。
一人の優秀な教師が大勢の学生を教育することが可能である。同時に、一人
の学生は大勢の教師から教育を受けることができるのだ。「1:多」の関係で
ある。
もう一つの可能性は、「1:1」の教育である。
インターネットを利用することで、一人の学生を一人の教師が徹底して教育
する。たとえば、職人的な技術の伝承や、個性を生かした創造的な教育の場合、
一人が一人に教えることが最もふさわしいだろう。
ここで言う教育とは、卒業の資格や認定などという問題を超越している。
「人生の師」とでも言うべき人間同士のつながりである。
かつて、日本には私塾があった。高名な先生がいれば、教えを請う若者が集
まった。逆に、先生を見限って、次から次へと塾を渡り歩く若者もいたという。
幕末のエネルギーは私塾がもたらしたとも言えるだろう。
インターネットを利用すれば、誰でも私塾が開講できる。哲学的な教育でも、
一芸の伝承でも良い。他人に教えることで、自らも豊かな人生を体験できるだ
ろう。
高齢化社会に向かう日本にとって、教育は国家的産業にもなりうるのではな
かろうか。日本固有の歴史と文化、教育水準の高い国民、長寿の国という条件
は、日本が世界に向かって教育産業を興すのにふさわしい条件と言えるだろう。
日本文化に興味を持つ外国人は数多い。きもの、茶道、華道、書道、日本画、
日本舞踊、邦楽、日本建築、陶芸、様々な伝統工芸。こうした独自のコンテン
ツを持ち、長い経験を持つ人が存在する国は、それほど多くはない。世界に向
けて、日本が私塾を開くのである。
「西欧文明に限界を感じている世界の諸君。また、日本に追いつけ、追い越
せと頑張っているアジアの諸君。日本には数多くの老師がいる。既に仕事から
はリタイヤしている余裕のある老師も多い。日本の文化、伝統、知恵を学んで
はいかがだろうか。
また、年老いたからという理由だけで、仕事を失った皆様。どうか、日本に
お出でください。日本で私塾を開いて下さい。経済的には不景気ですが、精神
的に豊かな国ですから」
私個人としては、声高らかに世界に訴えたいのだが、さて、現実は?
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