038,輸入増大か?流通コスト増大か?

2000/06/17

 リサーチニュースに連載しているMARKET NOWの6月13日付けのエッセイを紹介します。
 そろそろ、経済合理性だけでなく、生活の生態系としての産業という視点を持っても良いの
ではないか、と感じています。


マーケット・ナウ(リサーチニュース2000年6月13日付け)

「輸入増大か?流通コスト増大か?」

有限会社シナジープランニング 代表取締役 坂口昌章

 綿花は、虫に弱く、大量の農薬を散布するのが一般的だ。毎年、大量の農薬
を散布するために、土壌汚染が著しい。「このままでは自分の子供達の世代に
汚染した環境を残すことになる」という危機感から「オーガニック・コットン」
が生まれた。オーガニック・コットンは、農薬を使わずに、天敵の昆虫を使っ
て虫を駆除する。そのため、コスト高になるが、消費者はそれに納得して高い
コットン製品を購入しているわけだ。消費者を騙してはいけないので、畑の認
定から各流通段階までの情報公開が義務づけられている。

 「オーガニック・コットン」は、「消費者は安い商品だけを選ぶとは限らな
い」ことを教えてくれた。消費者に納得してもらえる理由があり、徹底した情
報公開ができれば、経済合理性を越えることができるのである。

 たとえば、「国内製造業を守れ」というキャンペーンも国や業界団体、商社
にアピールするのではなく、消費者にアピールするべきではないか。

 日本人の雇用を守ることは、公益である。わずかのコスト高を我慢すること
で、日本人の雇用が守れるのならば、消費者は納得するのではないだろうか。
その代わり、徹底した情報公開が求められる。原料から最終製品までの各段階
の企業名と、日本人の雇用を証明しなければならない。加えて、消費者に納得
してもらうために、輸入品のコストと、国内生産を比較した場合、どの程度の
人件費の格差があるのか、という情報も公開すべきだろう。更に、原価の構成
も問題になる。製造原価と流通コストを明記すれば、いかに製造業が圧迫され
ているかを消費者に訴求することができる。

 国内製造業の問題は、輸入品の増加ばかりが取り上げられるが、背景には流
通コスト増加の問題があることを忘れてはならない。顧客は、生産コストを切
り詰めようとは考えないだろう。流通コストを圧縮することを望んでいるはず
である。

 流通コストを圧縮すれば、内外の工賃格差は簡単に解消できる。国内製造業
を活用し、雇用を守り、しかも安価な商品が入手できれば、消費者にとって文
句はない。輸入品は攻撃しやすいが、得意先は攻撃しづらい。そんな手加減が
見える限り、消費者は製造業者に与しないだろう。◆