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037,日本発「合繊ハイテク・カジュアル」の提案
2000/06/02
チャネラー7月号が発行されました。
私が連載している「新市場への新ビジネス提案」は、合繊ハイテク・カジュア
ルの提案です。この企画は、実際に何人かの方には見せたことがありますが、
話のスケールが大きすぎるのか、現在の段階ではお蔵入りになりそうです。そ
こで、一般に公開して、何らかの反応があればいいな、と思って寄稿しました。
アメリカンカジュアルはコットンカジュアル、日本が合繊カジュアルを発表す
ると、中国はシルクカジュアルを、ペルーはアルパカカジュアルを発表すると
なると、面白いですね。私としては、もう一つ、きものカジュアルも出したい
ですね。これは、そのうちに発表しましょう。
チャネラー連載「新市場への新ビジネス提案」第10回
日本発「合繊ハイテク・カジュアル」の提案
有限会社シナジープランニング 坂口昌章
●アメリカン・カジュアルはコットン・カジュアル
アメリカは綿産国である。ジーンズもTシャツも、アメリカが綿産国である
が故に生まれた。ギャップ、エディバウアー、ランズエンド等の秋冬物には、
必ずコットンのセーターが出てくる。日本の感覚では、綿のセーターは春夏物
だ。しかし、綿産国アメリカにおいて、コットン製品はオールシーズン対応な
のである。
アメリカは、自国のオリジナル製品を自信を持って世界中に情報発信する。
洋服の完成度から言えば、アメリカ製の服はヨーロッパ製に遠く及ばないが、
ヨーロッパとは異なる文化を背景にした独自の製品として位置づけているのだ。
その結果、ヨーロッパの若者にアメリカン・カジュアルを浸透させることに成
功している。
こうしたアメリカの姿勢は、日本のファッション業界も学ぶ必要があるだろ
う。「イタリアに学ぶ」ことも大切だが、日本と欧米とは異なる文化背景があ
ることを認識し、独自の製品を世界中に発信すれば、世界の市場シェアに食い
込むことも可能だろう。
アメリカのファッション製品は、基本的に工業製品である。ファッションデ
ザインは、インダストリアルデザインの一部である。ヨーロッパのファッショ
ン観は、一部のスノッブを満足させることを目指す。しかしアメリカでは、大
衆に満足を与えてこそ、グッドデザインであり優れたファッションであるとい
う価値観を持っている。
工業製品が持っている機能性の美しさ。伝統や権威を象徴するデザインとは
異なり、シンプルで自由なデザイン。それが世界中にアピールしているのであ
り、言い換えれば、カジュアルの本質と言えるかもしれない。
少々、話が脱線した。ここでは、アメリカン・カジュアルは、アメリカが産
する豊富な綿資源が背景になっており、工業製品と同様の思想で作られた大衆
商品であることを確認したい。ギャップ等のSPAも、コットンを基本にした
アメリカン・カジュアルの進化版と考えていいだろう。
●テキスタイルを切り口にした日本発カジュアル
輸入品に押されっぱなしの日本だが、そろそろ、独自のアイデンティティを
確立し、世界に発信できるカジュアルを考えてもいいのではないか。
現在、ユニクロが急成長している。世界市場にも通用する品質と価格を実現
している。ユニクロの背景は、日本に隣接する中国の生産機能と、世界で最も
目の肥えた顧客(アメリカ人以上のアメリカン・カジュアルへのこだわり)の
存在だろう。しかし、ユニクロの商品そのものは、基本的にアメリカン・カ
ジュアルが基本になっている。現段階では、日本の文化を土台にしたオリジナ
ル・カジュアルとは言えない。
今回、提案するのは、あくまで日本オリジナルのカジュアル・ファッション
である。
アメリカはコットン大国だが、それでもアメリカにおける最高級コットンの
シャツ地は日本製である。また、有名デザイナーズジーンズに使用しているデ
ニムも日本製である。日本の綿紡績、織布の技術は世界一の水準であり、他の
国の追随を許さない。
アパレルや小売の人には知られていないが、日本のテキスタイルには世界最
高水準のものが数多く存在する。これは何もコットンだけの話ではない。ウー
ルや合繊の分野でも、世界最高水準の技術が数多く存在するのである。
日本のアイデンティティの一つは、このテキスタイルだろう。
ギャップの服を、全て日本の高級なコットン素材ときめ細かい縫製技術で仕
上げれば、それだけでも日本オリジナルの高級カジュアルが誕生する。また、
複合素材を駆使したモード系カジュアルもありうる。ハイテクなウールを中心
にした、ヘビーデューティーなウール・カジュアルもあるだろう。中国の安価
なシルクを活用すれば、ラグジュアリーなリラクシング・カジュアルも考えら
れる。
●本命は、ハイテク合繊カジュアル
日本が世界に誇りうる様々なテキスタイルの中でも、最も他国と差別化が可
能で、市場性の高いのは、合繊だろう。日本の合繊は世界市場を制覇している。
ナイキもプラダも最高級の合繊製品は、日本のテキスタイルを使用している。
(ナイキのボリューム商品は韓国、台湾製)
加えて、日本のスポーツウェアメーカーの技術力がある。オリンピックの競
技用ユニフォームも日本製品のオンパレードだ。日本の合繊メーカー、日本の
スポーツメーカーのハイテクが複合した結果である。このハイテク技術こそ、
日本のアイデンティティであり、21世紀の世界市場に通用するコンセプトと
なりうるのではないだろうか。
ジーンズは実用的なワーキングウェアから生まれた。安くて丈夫。しかも、
性別、人種、宗教、年齢に関わらず、誰でも着られる。誰でも着られるという
ことは、大量生産が可能だと言うことだ。
21世紀の合繊ハイテク・カジュアルは、肉体の限界に挑戦するアスリート
を対象にしたスポーツウェアが基本になる。究極の機能性を有しているスポー
ツウェアは、ハイテクの固まりである。しかも各選手は、それぞれ体型が異
なっている。オリンピック等で使われるユニフォームは、量産品でありながら
カスタムメイドだ。日本の多品種少量短サイクル生産システムを活用すれば、
アメリカの大量生産とは異なるカスタムメイドのカジュアルウェアの展開も可
能だろう。
スポーツウェアは、ごく限定された人を対象にした特殊な服である。カジュ
アルウェアは、一般大衆を対象とした普段着だ。即ち、合繊ハイテク・カジュ
アルを具現化するには、特殊な用途のものをいかに一般化するか、でポイント
になる。広告等のイメージはあくまでも尖ったイメージを大切にしながら、し
かし、普通に街で着られる服。明確なハイテクの技術による差別化をしながら、
誰もが着られる服である。
●健康志向とエコ志向にも対応
究極の機能性は、健康にも良いはずだ。体が動きやすいということはカジュ
アルウェアの条件になる。リーバイスのエンジニアド・ジーンズは、アメリカ
ン・カジュアルのハイテク版だが、ここで考えるカジュアルは、全てのアイテ
ムがエンジニアドでなければならない。
誰もが着やすい、動きやすい服は、ユニバーサル・デザインに通じる。高齢
者から身障者まで楽しめるファッショナブルなカジュアルである。
また、ナイロン6のように完全リサイクルが可能な合繊もある。生分解繊維
もある。テンセルやリヨセルも、通常のレーヨンよりも環境に優しい。
合繊メーカーや紡績が開発している高機能加工も駆使する。撥水、防汚、防
縮、制電、紫外線カット、電磁波カット等。
これらの素材を駆使することで、健康志向、エコ志向にも対応できるだろう。
以上のようにハイテクを駆使した単品を一つずつ開発していく。
コットンカジュアルの傑作であるTシャツ、ポロシャツ、ダンガリーシャツ、
ジーンズ、チノパンツ等をハイテク合繊に置き換え、エンジニアドなパターン
と縫製で再構築するのである。
現在、コットン・カジュアルは、世界のカジュアル市場を制覇している。し
かし、ハイテク合繊カジュアルを完成させれば、カジュアル市場のかなりの比
率を獲得できるのではないだろうか。
日本は洋服の伝統がない。その分、タブーもない。ハイテクで新しいグロー
バルカジュアル。それができるのは日本だけである。
合繊メーカー、紡績、スポーツメーカー、商社が共同出資して、世界のカ
ジュアル市場を攻略するベンチャー企業を立ち上げることを併せて提案したい。
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